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学校一の陰キャが学校一の不良に「諸事情あって」ベタ惚れされた話
第46話 とある作戦
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聖山高校は、青木の言った通り山奥にあった。山奥と言っても登山するほどのものじゃなくて、田舎特有のちょっとした山の中だ。つまりここに来るまでかなりキツい坂道を登る必要があった。
天宮はけろっとした顔で登っていたけど、体力0の陰キャの俺と体が弱いという青木はそれだけでもう疲れきっていた。
ただ本題はここからなので、二人して青ざめた顔をしながら生徒たちを観察する。と言っても私服の男三人組がこんなところにいても目立つのでコソコソ隠れながらだけど。……これじゃほんとに不審者だ。
丁度土曜授業の下校時刻に出くわしたようで、都合よく校舎からは出ていく生徒がたくさんいた。
「どう?佐山くん」
青木に聞かれ、注意深く男子生徒の制服の構造を見る。似たようなものは他にもあるかもしれないけど、特徴的なネクタイの柄は他にないような気がする。それから質のいいジャケットもそれっぽい。
「間違いない。あの制服だ……」
「優は?見覚えある人とかいる?」
「ううん……喧嘩した相手の顔ってあんま覚えてねえからな。この前みたいに直近のことなら覚えてるけど……」
「佐山くんが唯一記憶に残ってるって言う幸也とかいう人は?」
そう聞かれ、さらに注意深く今度は一人一人の顔に目を向ける。ただ下校時刻というだけあってわらわら人がいる。
「さすがに人が多すぎてなんとも……」
「こうなったら直接聞くしかねえな」
「それは問題になるからやめよう?」
「春くんが言うなら!」
天宮がとんでもない形相で乗り込もうとしているので、慌てて止める。これじゃ喧嘩売りに来た不良でしかない。
「優が喧嘩のことでも大人しい……惚れ薬ってすごい……」
青木はその様子を見て呑気にそんなことを呟いていた。これじゃ犯人の特定までは無理かもしれない。
と、思った矢先。
「ねえねえ、あの人たち何やってんの?」
「さ、さあ……近づかない方がいいんじゃない?」
さすがにいくら隠れていても男三人じゃすぐに見つかってしまったようで、通りがかりの女子二人組にひそひそと怪しげな目を向けられてしまった。
のだけど、何やら二人組は態度を一変し、ぽっと顔を赤くした。
「あの背高い人、かっこよくない?」
……なるほど。天宮は顔は可愛くても目つきが悪いし、俺は自分で言ってて悲しくなるけどとりあえず論外。
対して青木は整った顔立ちをしている。俺たちと比較しても目立つのは当然と言えた。
「ほんとだー、なんか征士に似てない?」
「確かにー!」
征士って、確か行きがけの電車で見た芸能人だか歌手だかだったか。確かに化粧さえなければ似ているかもしれない。
「……」
「……」
「……な、何?」
思っていたことは同じだったようで、俺と天宮は揃って青木に目を向けた。青木もどこか悟ったのか、心底嫌そうな顔をしながらこちらを見たのだった。
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