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学校一の陰キャが学校一の不良に「諸事情あって」ベタ惚れされた話
第50話 そして
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「結構時間経ったな」
それから数十分ほど経過した頃。
さすがに下校する生徒もまばらになり、顔の判別がつけられるようになってきた。だからこうして相変わらず隠れながら覚えている限りの神崎の顔を探しているわけだけど……。
「佐山くん、いない?」
「うん……」
どこにも俺が見た記憶のある顔の人物がいない。生徒会の仕事とやらが長引いているのかもしれないけど、そろそろ陽も暮れ始める頃だ。
「もしかしたら裏門から帰ったとかかもな」
「とりあえず、今日は帰る?生徒会の仕事とやらがない日に来る方がいいかも」
といってもその生徒会の仕事がない日なんてこちらには検討もつかないけど、まあそこまで急ぐこともない。天宮のこの状態は治したいけど、会ったところで治せるかも危ういし。
「でも……」
「春くんの言う通り、また来週チャレンジすれば良い」
「……」
青木は納得いかない表情をしている。ともすれば一人でもここで待っていると言い始めそうだ。顔が分からないんだからそんなことも言ってられないけど。
さすがにこれ以上待って遅くなりすぎるのもまずいし、何とか説得しないと……。
そう思って、不意に今日だけでも見飽きた校門へと視線を向けた時。
「…………あ」
「?」
「あれ……あの人だ」
「え!?」
見つけてしまった。校舎の中から出てきた、長身の男。
遠くからでも目立つ長めの銀髪が風に揺れている。
一見すれば青木にも負けず劣らずの整った顔立ちで、それはもう魅入ってしまうほどだ。
でも、あの日……あの様子を黙って見ていたあの姿と一緒だ。つまらなさそうに、ただ世界の全てを他人事のように捉えた生気のない目。
「……」
「どうする?やっぱ俺も行こうか?」
黙り込んでしまった俺を見て一筋縄ではいかないことを悟ったのか、天宮がポキポキと指の骨を鳴らしながら言った。
いや、耳元で鳴らすのは心臓に悪いのでやめてほしい。
「……俺行くから。二人とも隠れてて」
「大丈夫なの?いきなり話しかけて」
「一応考えはある。それに二人のことさえバレなきゃいいよ」
「……」
青木は意を決したように、隠れていた林から抜け出した。向こうは校舎を出た直後なので、この様子は見られていないだろう。
念の為天宮と相談し、もう少し距離をとる。他の生徒がほとんどいない分、多少遠くても会話は聞き取れるだろう。
「あの、すみません」
そうして、校門を出た神崎に青木が声をかけた。
「ちょっと……聞きたいことがあるんですけど」
「……」
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