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学校一の陰キャが学校一の不良に「諸事情あって」ベタ惚れされた話
第53話 言ってしまった
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何も言えないままただ目を合わせていると、神崎は静かに笑った。
「俺はね、予想もつかないことが起こるのが好きなんだ。それから自分の思い通りにならない人も好きだ。そういう人って……思い通りにしてみたくなる」
「────っ!」
まずい、と思った時には、天宮によって腕を離されていた。先程まで俺の腕を掴んでいた手を力強く握りしめていて、それだけで心が締め付けられる。
「こいつから離れろ」
「優ちゃん……」
「優ちゃん、ね。……そんな怖い顔しないでよ」
それを聞いて、神崎はこちらの状況を悟ったようだ。元々惚れ薬を飲ませていてここに俺が来たのだから、こうなるのも必然と言える。そのせいか、どこかその表情はつまらなさそうだった。
「とにかく……あの日君がきたことは想定外だった。通りがかる人がいたところで、乗り込んでくる人なんていないと思ってたからね。まあ……そうなればここに来るってことは想定内だったけど」
確かに、普通の人なら異変に気づいてもまず警察を呼ぶだろう。
結果的にはあそこで乗り込んだおかげで天宮は無事で済んだわけだけど、それは結果論。俺は返り討ちにされていてもおかしくはなかった。
「聞きに来たのは惚れ薬のことだろう?」
「!」
神崎はそれから、ふと確信をついてきた。最初から予想はついていただろうけど、敢えて口にしなかったのだ。
分かりきっていたことだけど、根っからの性悪らしい。はっきり言ってかなりタチが悪い。
悪びれる様子も、しらばっくれる様子もない。ただ起こったこととして、終わったこととして認識しているわけだ。天宮がどれだけ大変かも知らず。
「しかし、あれも想定外だったなあ……不良の誰かに天宮くんが惚れてくれればつまらなくはないかなって思ったんだけど……イレギュラーが来てくれたおかげで、面白いことになってくれた」
「お前……やっぱりあの日優ちゃんを……」
「俺は不良たちに好きにしろって言ってただけだよ?捕らえろとは言ったし、惚れ薬の説明はしたけどさ。そのあと何するかなんて……まあ、予想はしてもその通りになるかなんて分からない。予想外のことが起きればいいなとは思っていたよ」
「優を……」
青木がボソリと呟いた。改めて突きつけられると怒りが込み上げてくるのだろう、拳を握りしめている。
「でも結果的には最高だったよ!アレも試作品だったわけだけど、君たち二人が一緒にいるってことはちゃんと効いてるみたいだしね」
「テメェ……ふざけ」
「ふざけるなよ!」
「!!」
気づけば俺は、そう大声をあげていた。
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