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序
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篝火に照らされた拝殿。
奏でられる音は無く、聞こえるものは舞い手が持つ鈴と裸足で踏み鳴らされる床、冠飾りのシャラシャラという音。
そしてその小さな唇から零れる韻を含んだ美しい謠。
ふわりふわりと翻る袖や裾はまるで重力を感じさせず見る者を幽玄へと誘う。
その舞い手はまだ幼く、それなのに何故そんなにも人を魅了するのか。
拝殿を取り巻く者たちは身動ぎもせず息すら忘れてその美しい子供に魅せられる。
文字通り最後の最後、床トンを響かせ舞い終わるとその子供は神体を祀る社に向かい静かに礼をした。
そこに来て観客たちは我に返り、一斉に大きく息を吐くのだった。
『なんという見事な……』『まだ幼い……継承が……』
『本来……16、7……』『……10年前………』
『まだ七つ……』『……浄化……稀代…』
『……これで…安泰……』『でも大丈夫……まだ…』
『……体力…成長…』『これから……次…楽し……』
騒めく大人たちを掻き分けて僕らは走った。
舞を見た余韻でふわふわと心許ない脚を叱咤し、精一杯の速さで境内を駆け抜け社務所に向かう。
その途中で男の人に抱き抱えられた彼を見つけた。
「モモ!」
「モモちゃん!」
呼ぶ声に気がついた彼は伏せていた顔を上げ僕らの方へと手を伸ばし、ふうわりと儚げに微笑んだ。
その笑みを僕らはずっと覚えてる。
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