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私の事情 霞綾彦の場合
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モモと初めて会ったのは小等部2年の時でした。
友人から招待状をいただいたとかで、母に誘われ二泊三日の小旅行をすることになったのです。
父や兄は都合がつかず、私は母と二人で出かけました。
そこでモモと出会ったのです。
友人たちに囲まれて屈託なく笑うモモはそれはそれは可愛くて、私は一目で好きになりました。
すぐに男の子だとわかりショックを受けましたが、好きなことには変わりなく、旅行中ずっとモモと遊んでいました。
大きなお祭りが開催されていて、私はそこで初めて買い食いというものを体験し、モモにとても笑われたのを思い出します。
そして、その祭りの最終日にあたる小旅行2日目。
その夜、奉納の神楽が行われました。
メインとなるのはモモの神楽舞です。
巫女装束のような着物や冠を身に着け薄く化粧も施され、篝火が照らす境内で鈴を手に歌い舞うモモはとても幻想的で美しく、私は夢心地で見ていました。
奉納舞は体力を使うそうで、まだ小さいモモはゆっくり休む必要があり会うことができませんでした。
最後に一目会ってお別れを言いたかったのですが仕方がありません。
帰り道、母にこのお祭りに招待される子供は将来大切な部署に就く子供なのだと教えられました。
兄はどうなのかと聞くと、お祭りはまたあるからその時に参加するのでしょう、と言われました。
「あなたは認められたのよ。霞グループを背負って立つ為にこれからも頑張りなさい」
そう言って頭を撫でてくれた母の手は優しかったけれど、とても重く感じました。
その後、私は以前にも増して全てのことに完璧であろうと努力しました。
兄と比べられても、むしろ私の方が褒められるほどでした。
小等部、中等部と生徒会長を務め、充実した毎日でした。
そんな時、あの男が現れたのです。
曰く、
高等部からの外部生。
怪我で長期間入院していて入学が遅れたにもかかわらず早々に変わり者揃いのSクラスに受け入れられ、尚且つ不在であったクラス委員に選ばれる。
先生からも好評価。
立ち居振る舞いが洗練されていて目を惹かれる。
私生活がミステリアス。
視線が色っぽい。
憂いを帯びた横顔に心を乱される。
声が艶っぽい。
抱かれたい。
高尚なものから下世話なものまで、噂は学園を巡りました。
クラスが違い面識はないに等しいのに、噂だけが、評価だけが私に届く。
私はイライラしていました。
そして、一年時の学園祭、ランキングでトップに立ったのは彼でした。
この学園では伝統でランキング上位者が生徒会役員となることになっています。
上位にはただ見目が良いだけではなれません。
文武共に秀で、人望に厚いものが選ばれます。
私は彼に敗れたのです。
共に働き、彼の為人を知ることとなりました。
嫌悪していたのにいつの間にか彼を認め、惹かれていく自分が許せませんでした。
相反する心と感情に、私はさらに苛立ちを募らせていました。
そんな時、モモが学園に来たのです。
幼い時とても愛らしかったモモは成長した今も愛らしく、そして美しくなっていました。
モモは私を救ってくれました。
モモといると気持ちが救われるのです。
ささくれ立った感情が、凪いで行くのがわかるのです。
そして、モモは彼の正体も看破りました。
紛い物。
彼の高潔さは偽物だった。
噂通り、親衛隊と淫らな行為を行なっている俗物。
あのような俗物に私は負けた…許せない……
彼が、そして、私自身も……
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