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第1章ー04 茨の道
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「すまなかったな。おれは室長の保住尚貴だ。これから3年間。よろしく」
会議室を後にして、席に座る。
時間は8時45分だ。
年度初め式が始まった頃か。
保住の視線に、右隣りにいた大堀がはっとして声を上げる。
「財務部から異動になりました大堀暁です」
「大堀ね」
保住は、にこっと笑顔を見せる。
そして。
「教育委員会星音堂から異動してきました安齋裕仁です」
「さっきはすまない。名前を知らなかったもので。眼鏡なんて呼んでしまったな」
「気にしません」
眼鏡をずり上げて、安齋はきりりとする。
めんどくさそうな男だと、保住は内心思う。
面倒は嫌い。
適当だといいのだけど。
田口のことは知っているけど、流れ上抜かす訳にもいかない。
田口を見る。
「文化課振興係から異動の田口銀太です。よろしくお願いします」
保住から見て、右側に大堀、安齋の順で座っている。
左側は田口と空いている席が一つ。
大堀の後ろには電気ポットが置かれており、田口の後ろには複合コピー機が配置されているという簡単な部署構成だ。
「今日から、この4名でアニバーサリーを乗り切らなくてはいけない。総務もバックアップしてくれるが、他部署との連携も必要となり、かなりの忙しさが予測される。ただ、おれたちには失敗は許されない。それだけの金が動くお祭り事業だ。心してかかること」
「はい」
「それから」
まだあるの?
安齋はそんな顔。
「4人しかいない仲間だ。仲良くしないとうまく回っていかないのは目に見えている。喧嘩しないように。仲良くな」
「子供じゃないんですから」
大堀は苦笑する。
「そうは言うが、そうそう仲良しの部署なんてないのは知っているだろう?」
「まあ、そうですけど」
「特にお前たちは同期だ。張り合ったり、蹴落としたいという思いが出て来るかも知れないが、それは控えろ。おれは誰かだけを評価するつもりはない。一人だけ出来ても他の職員がしくじったのであればそれは失敗と見なす。全ての歯車がうまくかみ合って成功はなされる。心してかかれ」
柔らかい笑みを見せ、保住がそう言い終わった時。
彼の目の前の内線が鳴る。
「はい、推進室。ああ。廣木さん。そうですか」
彼の話が始まるのを見て、大堀はため息だ。
「なんだかやばいところに送られてきた気がする」
「そんなこと。来る前から分かっているだろう?」
安齋は冷たい。
そんな二人のやりとりを見て、田口も頷く。
そう、ここからがスタートなのだ。
保住の言う、茨の道が。
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