アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
第2章ー04 赤ちょうちん
-
一同がやってきたのは、やっぱり赤ちょうちん。
20時過ぎて市役所の近くで飲んだり食べたりできるところは、ここくらいしか思いつかない。
「いらっしゃい」
いつものおかみさんに挨拶をすると、隅の座敷に通された。
第一弾が帰った後らしい。
まだ少し残っている食器をスムーズに下げて、テーブルを拭いてくれる。
「係長、何飲みますか」
大堀の言葉に保住は「冷」と答える。
「あ、おれも日本酒派なんですよ~」
「そうなのか?お前はどうする?」
「おれも、同じで」
田口は、そう答えると安齋を見る。
「おれも」
「みんな日本酒派か~」
大堀は嬉しそうだ。
こういう時、幹事みたいに気を利かせて動くのは大堀の性質らしい。
お酒を注文し、さらに料理をいくつか頼む。
「同僚と飲み会なんて、久しぶりだな~」
大堀は嬉しそうに笑顔を見せた。
「大堀は吉岡さんに付き合わされているのではないか」
保住の質問に彼は苦笑いだ。
「可愛がってくれるのは嬉しいんですけど、吉岡さんってどこにでも連れて行ってくれるので、逆に言うとプライベートが圧迫されていました」
「だろうね。あの人。昔からそう」
「吉岡って?」
安齋は隣の田口に、こそっと尋ねる。
「財務部長の」
「ああ。大堀は、そんな人と飲み歩いていたのか」
「そんな人って、結構くだけていて楽しかったけどね」
「そうか」
こんなおちゃらけた感じなのに。
部長クラスに気に入られるなんて。
珍しい話だ。
「吉岡さんはおれの父親の同僚だ」
「じゃあ、小さい頃の室長を知っているってことですか?」
「さあね。どこまで知っているんだか」
「室長のお父様も市役所ですか」
安齋が今度は口を挟む。
「ああ。そうだったな」
「だった?退職されるお年には思えませんが」
「死んだんだ。病気だ」
「これは失礼いたしました」
「別に。そんなかしこまった話ではない。もう昔の話だ」
保住がそんな話をしていると、酒や食べ物が運ばれてくる。
「湿っぽい話はやめだ。今日は懇親会なのだろう?どうだろうか。それぞれ好きなことや興味のあることをおれに聞かせてくれ」
保住は上機嫌。
他の三人は顔を見合わせた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
12 / 175