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第2章ー06 興味
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「あの人は謎だな」
大堀は、おちょこでは飽き足らずに替えてもらったグラスをテーブルに置く。
別に彼のうだ話に付き合いたくて残ったのではない安齋だが、結局、大堀も居残りをするというので仕方ない。
大堀とこそこそと話したい訳ではないのだ。
しかし、彼のほうに話があったらしい。
「今日の昼間のって何?おれにも教えろ」
「今日の昼間?」
「おれにだけ分かんない話!田口としていたでしょう?」
安齋は「ああ」と声を上げてから、ニヤリとする。
「偉そうだな。教えてもらう立場のクセに」
「これしか人数いないのに、おれだけ知らないだなんて意地悪だ、仲間外れだ」
彼は抗議する。
面倒。
正直言えば安齋の感想はそれ。
「田口は自分の書類なんてどうでもよかったのに、室長がおれの出した書類に気が付いていなかったから、さりげなく声かけてくれたんだ」
「え?そういうこと?」
「お前、鈍感」
「な、本気で頭来る。安齋って恋人も友達もいないだろう!」
「バカ。恋人くらいいる」
「嘘でしょう!?」
大堀はショック。
顔を真っ青にする。
「何だ、その驚き様は……失礼だな」
「嘘だ~!おれだっていないのに」
「お前いないの?」
相手の弱みを見つけると、すぐに握りこむのが安齋の性質。
彼は意地悪な笑みを浮かべる。
「お前、つまんない男だな」
「う、うるさい!なんだよ!きっと。田口だっていないよ、きっと……」
「さて。どうかな……?」
安齋は意味深な表情で黙り込む。
あの男に恋人がいないだって?
安齋はそうは思わない。
田口にはいる。
確実に。
「うううう……安齋の意地悪」
「意地悪?これがおれだが」
「室長に言いつけるもん」
大堀は泣き真似。
そんな彼なんて相手にしないかのように、自分の思考を巡らせる。
まあ確かに、保住は仕事の出来る仕事しかない人間なのかと思っていたが。
今日の飲み会では、彼の意外な部分を垣間見た。
こういう席に来ると仕事の話は振られない限り一切しない。
大堀をいじって遊んだり、田口をいじって遊んだりしている彼は、今までの印象とは違っていた。
特に、田口をいじっているときの彼は嬉しそう。
笑顔が絶えない。
いつもは難しい顔をしていることが多いが、笑顔を見せる保住は年齢相応だ。
よくよく考えたら、彼は自分たちとそう年齢は違わないのだ。
確か二つ上だと聞いてる。
初日に、副市長である澤井との邂逅を見た限り、すごく別世界の人であるかのように見えたのだが。
今日の飲み会では、全く違う一面が見られた。
特に、田口とは前職でも一緒だっただけに、すごく親しい感じに見受けられた。
まるで友人みたいな……。
「興味がわいた」
「え?おれはそういう対象にしないでよ」
「お前じゃない」
「じゃあ、何だよ~」
大堀の相手は面倒だ。
彼と話していると似ている男を思い出して、なんだか胸がくすぐったくなる。
「もうお前とは二人飲みはしない」
「~!?どういうこと?嫌いってこと!??」
大堀は目を白黒だ。
社会人になって、面等向かってそんなこと言われたことがないと言わんばかり。
安齋はさっさとお金を置くと立ち上がる。
「帰る」
「どういうこと?安齋の言っている言葉、一つも分からないよ、ねえ!分かるように話してよ」
「うるさい」
「ひどいー!こんな冷たいやつに会ったことないんだからね!」
「……」
「無視?!」
大騒ぎになる大堀を見捨てて、安齋はさっさと赤ちょうちんを後にした。
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