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第2章ー11 ギスギスした関係
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「なんだか、適当な人なのかと思ったけど、細かい性格だよね〜。吉岡さんは、結構、おれのアレンジ気に入ってくれたんだけどな……」
保住が席を外すと大堀は、ぶ〜と口を尖らせる。
それよりも面白くない顔をしているのは安齋だ。
「おれの書類が気に食わないって、どういうことなのだ。そんなこと一度も言われたことがないぞ」
かなりプライドが傷ついたのだろう。
不機嫌さが隠しきれていない。
元々、攻撃的なところはあると思っていたが、なかなかどうしてだ。
一緒に働くのは難しいのではないかと思ってしまう。
「気に食わないって言ったのは佐々川課長だろう?」
田口はそっとつけ加えるが、安齋に睨まれた。
「そんなものはどうだっていい。誰が言ったのかが問題ではない。そう言われたということ自体が問題なのだ」
「しかし、そんなに怒らなくても。室長はおれたちの書類を見てくれているし。野放しにしているわけではないだろう?だったら相談して……」
「田口。お前は、いつまで室長におんぶに抱っこする気だ?」
安齋は田口を睨んだ。
「え」
「確かに。室長に確認をして進めれば問題ないかもしれないが。それでは、いつまで経っても室長に頼り切りだろう。お前は一人前になりたくないのかよ」
そんなこと。
それは。
分かっているけど……。
「安齋、そんなきついこと言って、田口に八つ当たりしたって仕方がないじゃない。田口だって一生懸命やっているんだし。ただ、おれたちとは育ち方が違うんだよ」
「過保護にな」
「また。そういうこと言わない。田口は保住室長の秘蔵っ子なんだし。仕方ないよ。今回だってわざわざ連れて異動してきたんだし。そんなことを田口に言ったって仕方がないじゃない」
大堀の言い方は庇ってくれているようだが、別な意味にも聞こえる。
田口は黙り込んだ。
そう思われるということは理解していた。
しかし、配属されてさっそく同僚からそういう言葉を投げかけられるというのは厳しい現実を突きつけられた気分だ。
「……」
「おれたちは同僚であるがライバルでもある。悪いがおれは、お前たちとは相入れるつもりはない。気安く話しかけるなよ。特に大堀」
「え!何言っているの?酷いね。本当、酷い」
安齋はしらっと言い放つ。
「おれはこの部署は足掛けだと思っている。ここで成功すれば、もっと高みを目指せる。お前たちは、足を引っ張ってくれるなよ」
「安齋……」
「本当、嫌な奴〜。それは、おれのセリフ。おれは、副市長目指しているんだから!二人になんか負けないもんね」
「ちょ……。張り合うところか」
田口はため息だ。
「野心のないやつは引っ込んでろ」
「そうだそうだ」
また。
妙に気が合うようだ。
そこのところだけ。
田口は黙り込む。
同期とはやはり難しい。
文化課振興係の頃が懐かしい。
みんなが同志で、協力し合って和気あいあいと仕事をしていた。
あの雰囲気は、保住が作っていたと思っていたが。
彼がいても今の場所はそう居心地が良いわけではない。
自分も協力しなくてはいけないのに。
安齋と大堀。
たった二人なのに。
なんともできないだなんて。
本当に力不足。
ギスギスした雰囲気も嫌だが、不甲斐ない自分にも嫌気がさしていた。
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