アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
第2章ー15 頭なでなで
-
「は、はっくしゅんッ!」
豪快なくしゃみ。
田口は身支度を整えてはいるが、完全に風邪だ。
「裸エプロンなんかするからだ」
お弁当を詰め終わってから保住は、ニヤニヤと笑う。
「だって……」
「無理するな。休んでもいいぞ。熱は?」
「7度ちょっとです。大丈夫です」
鼻をかみながら彼はグズグスとしている。
全くもって手のかかる男だ。
「まだまだ朝晩は寒い。自重しろよ。結局、夕飯だって食べ損ねたじゃないか」
「……すみません」
お弁当を彼の目の前に出す。
「ほら」
「ありがとう、ございます」
微笑んでから、方向を変えようとする彼の腕を捕まえて、抱き寄せる。
「なんだよ。時間ないぞ」
「すみません。でも。保住さんと二人だけでこうしていられたらいいのにって、思ってしまって……」
田口は相当疲れているようだ。
同期との小競り合いには馴染まないのだろう。
ソファに座ったまま腰のあたりをぎゅーっとされると、頭を撫でたくなるものだ。
保住は彼の頭を撫で撫でしてあげた。
「無理するな。お前はお前のやるべきことをやれ。あの部署を纏めるのは、おれの仕事だからな。気を回すことはない」
「でも」
「いいのだ。大丈夫だ。こればかりはおれの役目だ。だが、なかなか時間を要することだ。辛い思いをするかもしれないが、今少し辛抱してくれ」
「……何か。あなたの力になりたいのです」
「その気持ちだけで嬉しい。お前がそこに座っていてくれるだけで心強い。ありがとう。田口」
保住に「市制100周年記念事業推進室は茨の道」と言われた。
つい一ヶ月以上前の話なのに。
なんだか遠い昔のように思える。
「なんでも言いつけてください」
「分かっている」
田口の頭を撫でながら保住は、そう呟いた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
23 / 175