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第3章ー03 口喧嘩
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結局。
澤井のところに行った保住は、昼になっても帰ってこない。
さすがに大堀が痺れを切らした。
「もう!室長は、どうしちゃったんだろう?様子見てきた方がいい?」
「副市長相手だぞ。そんなことできるわけないだろう」
安齋は嗜める。
「でも……。おれの仕事が進まないじゃない」
「それはおれもだ。室長がいないと仕事が進まない仕組みなんておかしい。これでは、おれたちが選ばれた意味がないじゃないか」
安齋の言葉に、さすがに田口が口を挟む。
「おれたちは、確かに選ばれたのかもしれないが。職権を与えられたわけではない。勘違いするな」
「田口ってお堅いんだから」
その件については、大堀は安齋寄りなのだろう。
「だって、自由にやれるようにって小数人なんでしょう?もう少し、おれたちにも職権回して欲しいんですけど」
田口には、理解できない。
大堀も安齋も。
自分自身に自信があるのだろう。
謙虚で控え目な田口からしたらよく分からない考え方だ。
控えるところは控えないと。
そう思っているのに。
「お前さ。逆に言えば小心者だよな。一人で仕事したことないの?」
「それは。……おれだって一人でやったことはあるけど……」
「室長が過保護なんだよ。きっと」
「そうだろうな。見ていても分かる」
「だから。それとこれとは別の話だろう?」
やはり、口を開けば喧嘩か。
田口は黙り込む。
一緒になって言い合っているほうが馬鹿みたいだ。
ここのところの風邪気味で体調もイマイチだ。
いつもだと風邪なんてどってことないはずなのに。
この疲れも悪さしているのだと思う。
なんだか良くなる気配がないのだ。
昼食の時間になったことだし。
弁当を抱えて立ち上がる。
「外で食べてくる」
「いってらっしゃい」
「どうぞごゆっくり」
本当に息が詰まりそうだ。
最初は、気が合う仲間だと思っていたのに。
こうして連日のように顔を合わせると、嫌なところも出てくるものだ。
中庭にでも行ってみよう。
そんなことを思いながら廊下を歩いていくと、お菓子をたくさん抱えて売店からでてきた野原に出会った。
「課長」
懐かしい顔に、思わず声を上げる。
野原は、じっと田口を見てから歩き出す。
「あの、無視ですか?」
ひどい。
まだ異動してから数ヶ月しか経っていないというのに。
忘れられたのだろうか?
そう思うが、彼はごそごそと袋を漁ってからチョコレートパイを取り出した。
ああ。
そうか。
パイ。
パイしかくれない。
野原を見て苦笑する。
「ありがとうございます」
彼は田口の手にある弁当を眺める。
「あの。食べます?」
そんなに食い入るように見つめられても。
他に食べるものもないのに、思わずそんな言葉がでてしまう。
まあ、食欲もないし。
そんなことを考えながら野原を見返すと、彼は目をキラキラとさせた。
「いいの」
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