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第3章ー07 獣の憤り
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観光課で共有で使用しているミーティング室は小さい。
職員4人がテーブルを囲むといっぱいなくらいの小さい部屋。
中心にある白いテーブルと灰色の椅子が4つ。
そのほかには何もない。
「何度も言わせるな。勝手に他部署との連携を図るなと言っているだろう?」
安齋の持っていた書類を眺めて、保住はそう告げる。
「しかし。半日も不在の室長を待っていられません」
「そんなに急を要する案件はない。いい加減にしろ」
「いい加減にして欲しいのは室長ですよ。おれたちを半日も放ったらかしだなんて。管理職としての責務違反です」
一つ言うと、すぐに反論してくる。
これが安齋の特徴。
自分を守りたい一心であるということは手に取るように分かった。
「そうか。お前たちは上司がたった半日不在にするだけで、たちまち仕事が行き詰まるということだな」
「そういうわけでは……」
「先走った勝手な判断は、思量深い男がすることではない。自粛しろ。いい加減に浅はかな行動だと思い知れ」
「そこまで言いますか」
「言うだろう?上司命令違反だ」
「おれを外したいのですか」
安齋はじっと保住を見据えている。
保住はため息を吐く。
「外すとか、残すとかの問題ではない。まだ始まったばかりだ。いい加減に仕事をしろ。お前の仕事っぷりは浮ついていて見ていられない」
「それは申し訳ありませんでした」
棒読みの謝罪は、なんの感情も生まない。
「選ばれし先鋭部隊ではないのだ。勘違いするな。地道に業務を進めろ。いいな」
「……」
「返事は」
「……承知しました」
「今日の書類は一からやり直し。おれのOKが出るまで門外不出だ」
「……」
保住はそれだけ言うと、さっさとミーティング室を出た。
安齋は舌打ちをする。
上司ではなかったら、とっくに痛い目に遭わせてやるのに。
そう思う。
自分よりも華奢で小柄。
年だってさほど代わり映えしないのに。
何が上司だ。
会議や澤井からの呼び出しの連続。
席にいても電話が鳴り止まない。
たまに時間があると思えば、田口の企画は丁寧に相談に応じているのに。
まだまだ保住の求めているものが分からないということもあるが、なにせ細かいわりに、自分たちへの対応は結構雑だ。
いちいち、保住の許可が欲しいだなんて。
星音堂時代は、課長の水谷は職員たちにある程度の職権を与えてくれていた。
なのに。
ここでは保住だけがルールだなんて。
納得できない。
そう思うのだ。
「イラつくな」
面白くない。
面白くないのだ。
安齋はイラつく気持ちを抑えることが出来そうにない。
書類を握ってからミーティング室を出た。
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