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第4章ー05 向けられる嫌悪感
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水野谷の元で、のびのびと自分のやりたいようにやらせてもらってきたのだろう。
彼の場合、入庁してからずっと星音堂に置いておかれたのは不幸中の幸いだったようだ。
こんなチームプレイができない男。
本庁にいたら目の上のたんこぶにしかならない。
まるで、昔の自分を見ているようだ。
自分もそうだったから。
自分のやりたいようにやると、周囲が着いてこられない。
保住の考えやスピードに着いてこられないのだ。
だから、上司には叩かれる。
本当に生意気な職員だったことだろう。
安齋と田口が比較的、気が合うのは見た目やタイプが違うのに根っこが似ているからかもしれない。
だから、きっと。
安齋は自分のことを嫌悪している。
田口も最初は、自分のやり方に異論を持っている目をしていたことを思い出す。
どうしても人と足並みがそろわないせいで、人から誤解されることが多い。
よく理解してもらったおかげで田口は、自分を好いてくれているようだが、安齋とは、なかなか仲良くなるのは難しそうだ。
「すまないな」
保住の言葉に安齋は、首を振る。
「ですから、おれは謝罪が欲しい訳ではありません。現状を改善していただきたいのです。それが室長の責務ですよね」
「それはそうだな」
軽く溜息を吐くと、安齋は「してやった」とばかりの顔だ。
試されている。
値踏みされているのだ。
自分がボスとして相応しいのかどうかと。
「考えてみよう」
「ありがとうございます」
話は終わり。
「室長、副市長との会議の時間です」
自席に戻った安齋の声にまた、嫌なことを思い出す。
今日は、企画書の中間報告を臨時で行うことになっていた。
澤井は忙しい。
通常は週に1回の報告を行っている。
そういった報告の際は、保住一人で行くことが多いのだが。
企画の初案をそろそろ提出していくことになっている。
まずは安齋の担当するオープニングセレモニーの企画案だ。
これはアニバーサリーの初っ端、4月1日に予定されている記念すべきセレモニー。
市長も参加し、盛大に祭りの幕開けを告げる大事な企画で、安齋はそのメイン担当者に位置付けられているのだ。
「先日、検討しておくようにと言っていたところの提出がなかったが」
「直しておきました」
「見ていない」
「見ていただかなくても大丈夫かと思います」
また自己判断か。
把握できていなかった自分も落ち度がある。
ここのところ、確かにやるべきことが多くて、時間に追われているのは確か。
だが、まあ安齋ならギリギリラインくらいは越えられるであろうと判断する。
ネクタイを締め保住は歩き出す。
その後ろを安齋は付き従った。
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