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第4章ー07 閻魔降臨
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「話にならん!よくもまあ、こんなクズな企画持ってきたな?お前、おれを馬鹿にしているのか!?」
澤井は、自分のデスクを叩いてよく響く怒声をあげた。
流石の安齋も閉口して固まっている。
「この企画書、これでまさかオッケーを出したのか?お前の指導がなっとらん。腑抜けめ。やる気あるのか!このクズがっ」
澤井の苛立ちは、当の本人ではなく保住に向けてだ。
彼を見向きもせず、澤井は保住をまっすぐに見据えているからだ。
正直に言えば彼任せだったことはいがめない。
職員間の調整ばかりに気を取られているのは確か。
また、安齋をコントロールできていないということも自分で理解していることを指摘されたのだ。
「申し訳ありません」
自分に非があることは、一目瞭然だった。
保住は安齋の隣で頭を下げる。
「やけに素直だな。謝っておけばやり過ごせるなんて思うなよ」
嫌味の一つでも返ってくると思っていた澤井は、逆に肩透かしの様子で、呆れたように椅子にもたれて、保住を眺めていた。
言い返す気にもならない。
澤井の期待に添えないから謝るのではない。
これは事実だからだ。
「今回はおれの不手際です。もう一度やらせてください」
「保住」
「室長……」
頭を下げる保住を見て、安齋も頭を下げた。
それを見て、澤井は大きくため息を吐いた。
「保住。お前らしくもない。部下の自主性を引き出すのもいいが、時には求心的に引っ張らなければならない。おれはお前にそんなことを教え込んだ覚えはない。組織は上司が全て。組織の命令に従えないものは去る。そうだろう?忘れたか」
「いいえ。忘れてはおりません」
保住は厳しい表情のままそう答える。
その答えに満足したのか、澤井は今度は安齋に視線を向けた。
「お前」
「はい」
「星音堂で水野谷に甘やかされたのかも知れんが、ここは本庁だ。今のお前の上司はおれだ。おれはあいつとはやり方が違う。部下に自主性など与えるつもりはない。お前の企画書は全くなっておらん。全て作り変えろ。明日まで待ってやる。それが出来なければ、星音堂に戻す」
彼は企画書を天沼に渡す。
「いらん」
「は、はい」
彼は安齋たちを気遣うようにそっと企画書を受け取った。
「こいつが不相応なら、保住、お前が作れ。明日までに持ってこい」
「承知しました」
話は終わり。
保住と安齋は、部屋を出て行く。
それを見送ってから天沼は、澤井を見た
「副市長が、保住室長に厳しいのは珍しいですね」
言葉にしてしまってから、はっとする。
怒られる?
しかし、澤井は、じっとしていた。
「あの男をコントロール出来ていない。あいつの力不足だ」
「副市長」
「あんなことで蹟かれたら、このアニバーサリーは乗り切れん。この一件を片付けられないなら、保住も下ろす」
「しかし。あの方以外に出来る人、いるでしょうか?」
「いない。そもそも、この企画自体止めるしかあるまい」
「そんな」
「恥をかくなら、最初からやらないほうがいい。それだけだ」
澤井は立ち上がる。
「次」
急に別なモードになる澤井に、はっとして天沼は書類を持ち上げる。
「次は、市長との打ち合わせです」
「行くぞ」
「はい」
二人は連れ立って副市長室を後にした。
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