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第5章ー03 結局、兄弟喧嘩?
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「昨日、おれの書類作成に付き合いすぎたんだ。仕方ない」
「安齋の?」
大堀に弱みを見せるのは嫌なのではないかと思うが、そういうことも正直にいうのか。
安齋は素直に説明する。
「おれの企画書、副市長からダメ出しされたんだ。今日再提出予定」
「安齋の書類でもダメなの?」
大堀は逆にそこに引っかかったようだ。
「ダメだった」
「そっか……厳しいね。副市長のオッケーもらうのって」
喧嘩はするものの、安齋の能力は買っているのか、大堀は、黙り込んだ。
そこに田口が口を挟む。
「書類に良し悪しはないだろう。好みの問題もある。安齋の書類が澤井さんの好みに合わなかっただけだ。安齋が悪いわけではない」
「そういうフォローは惨めだからやめてくれ」
安齋は不本意な顔をするが、この野獣みたいな男も弱い部分があるのだと知って、なんだか身近に感じられた。
安齋は怒ったつもりかも知れないが、大堀と田口は苦笑するばかりだ。
面白くない。
「馬鹿にして! 室長に言いつける」
「あらやだ。安齋、いつの間に室長頼みになっちゃったわけ?」
「うるさい」
大堀は怒られても大してへこたれない。
「昨日サボった分、さっさと働け」
「しつこいな~。おれは自分の権利として休みを使っただけじゃない。いちいち言うなよ」
「こんな忙しいときに」
「忙しいのは安齋だけでしょ」
結局、二人そろうと喧嘩になるのは当然だ。
兄弟みたいだ。
一緒にいると喧嘩ばかり。
でも、いないと少し寂しい。
そういうところかも知れない。
「安齋、企画書」
「これだ」
田口は安齋の企画書を眺める。
さすがに彼だ。
一から作り直しの指令が出ていたものの、保住に指摘されたところは澤井の好みに沿って直されている。
安齋の書類は、簡素化してあって極端だ。
だが、その分説明が足りない部分もあるのか。
初めてみた。
彼の企画書。
「どうだ、田口。遠慮なく言ってくれ。時間がない」
「あ、ああ。そうだな。いい感じだ。ただ二点だけ、改善してもいいところがあるかも」
「どこだ」
安齋は、席を立って田口の隣の空いている席に座った。
そのうち内線が鳴る。
「安齋。天沼」
「ああ」
早速、今日の日程だろう。
「おはよう。昨日は悪いな。今日も面倒をかける。……そうか、分かった。ではその時間に田口と行く。え?室長は休みだ。体調不良だ。分かった」
安齋は電話を切る。
内容を知りたい田口の視線を感じたのか、すぐに電話の内容を伝える。
「11時30分に副市長室に来いとのお達しだ。お前と行くと伝えた。まだ時間があるな。よかった。さっそく改善してみる。また見てくれ」
「分かった」
二人の会話を見て大堀は、にやにやとした。
「なんだ」
「ううん。余計なことを言うとまた喧嘩になるし。黙っておきます」
安齋は昨日一日で随分変わった。
だけど、大堀も少し変わった気がする。
喧嘩しながら、揉めながら、こうして自分たちはチームを組んでいくことになるのだろう。
田口はそう思う。
そして、保住は大丈夫なのだろうか。
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