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「水無森先輩」
「え……っ、ぁ、矢崎」
不意に声をかけられ、ぱっと顔を上げると矢崎が目の前に立っていて。彼は時計を指さして知らせる。
「時間、良いんですか?」
「ああ、もうそんな時間か」
見れば3時半を回っており、鈴は周りの生徒会役員達に声をかけた。
「仕事はこっちでやるから、みんなは部活へ行ってくれ。練習は出ておいた方がいい」
夏休みを来月に控え、他校との交流が増える時期。実際この時期は生徒会業務より、生徒会特別の部活動助っ人の方が多いのだ。引き受けたからには、練習に参加して馴染んでおかねばならない。
今現在、怪我人の鈴以外は全員受け持っているので、そちらへ行ってても構わないのだが。
「しかし、会長だけにお任せする訳には」
「会長と言っても、同じ生徒会役員だろ。動けないからちょうど良いし」
「でも……本当に手伝わなくて大丈夫ですか?」
「遠慮しないで、私達にできる事ならしますよ」
各々の仕事の手を止めつつ心配気に申し出てくれるのをやんわりと断り、労う事も忘れない。
「気持ちは嬉しいが大丈夫。みんなも部活の助っ人を引き受けたなら、練習に参加して馴染んでおいた方が良いだろ。大変な時に心配をかけてすまない」
「会長……」
困り顔で微笑む鈴の表情に役員全員がキュンとなっているのは確実だ。感動しているのは本人以外が分かっていて、さりげなく矢崎が間へ入る。
「そんなに心配しなくても大丈夫ですよ。僕が手伝いますから」
まだ躊躇ってる役員達にそう告げ、再び顔を鈴に向けて微笑む。
「ね、先輩」
同意を求める矢崎の顔はいつもと変わらないはずなのに、一瞬肌がざわめく感じがした。
何か分からないモノが引っかかる。
しかし、周りの者達は矢崎の仕事ぶりを見ていて信頼しているのか、安心して部活へ向かう準備を始めた。
「矢崎君がいるから安心ですね」
「そうそう、大丈夫よね」
「では、お言葉に甘えてお先に失礼します」
二人へ口々に言葉を投げ掛け、ドアの前でお辞儀や手を振って出て行く全員に手を振り返した。パタンっとドアが閉じ、疑惑を押し殺して話す。
「すまない、矢崎。どうも心配されるのに慣れなくて」
「いえ」
苦笑する鈴に笑顔を返した矢崎は、何故か背を向けてドアに向かい鍵をかけた。驚きに目を見開き、訝しげな視線を送る。
「……鍵はかけなくても良いんだがな」
耳の奥で警告音が響く。
振り返った矢崎の表情が、冷たく笑っていたから。
「先輩に聞きたい事があるので、必要なんですよ」
「聞きたい事?」
警戒した声音も気にせず、ゆっくりと近付いてくる。次第に詰められる距離に、怪我した足と部屋の奥の位置では逃げようがない。
「先程、何を……いえ、“誰を”考えていらしたんですか?」
「……っ」
「ああ、質問を変えましょうか」
一瞬の動揺を見つめ、トンっと机に手をついて身を乗り出した矢崎は、頬に滑らせた手で引き結ばれた唇に触れた。
「時川って人は、先輩の何なんですか?」
「何を急に……」
「マフラー越しにですけど、キスしてたの見ましたよ」
「っ!?」
冷静を装っていたが、思いもよらぬ発言に言葉を飲み込んだ。
まさかあの時に誰かがいたなんて。
声をなくしてただ矢崎を見つめる鈴に、口元を歪ませてみせる。
「突然現れたくせに、我が者顔で先輩の隣にいるし。僕が早く傍にいたのに、横槍入れて……ねぇ、先輩の何なんですか?」
もう一度同じ質問を繰り返した瞬間、本能的に身体が動いて駆け出そうとした。しかし、踏み出した際の痛みがそれを引き留め、あまりの強さにうめき声を零す。
「く、ぅ……っ」
壁に手をついて膝が崩れると、小さく笑みを浮かべた矢崎もしゃがみ込んだ。
「ああ、そんな無理するから」
「…矢崎…」
「痛みに堪える姿も良いですね」
思いっきり踏み出していたらしく、想像以上の痛みが思考を遮る。矢崎は顔を歪ませて唇を噛んで堪える鈴の肩を掴み、執務机の足へ背中を押し付けた。
「ぅ、あ……くっ」
反射的に瞑った目を開く前に鈴のネクタイを手早く解き、机の足に背を当てたまま両腕をくの字に曲げて固定させる。
「何をして……っ」
「手首を縛ったら痕付きますから。腕ならあまり動かないから擦れないでしょう」
「やめ……っ」
首筋へ近付く唇から逃れようと身体を動かしても、ガタっと音がするだけで動かず矢崎に簡単に捕まってしまう。そのまま首の付け根に吸い付かれ、微かな痛みを感じた。動く腕が怖くて、身体の震えを止められない。
「……っ」
いつの間にかボタンを外しはだけたワイシャツを腕まで下ろされた鈴は、息を飲んで顔を反らす。恐怖が足の痛みを麻痺させ、どうやって逃げたら良い、どうしたら矢崎を止められる、とそればかりが頭に浮かぶ。
「声、上げたかったら上げて良いんですよ」
声を上げられない状況なのを分かっていてそう言う矢崎を睨み付けると、彼はおかしそうに笑って胸で色付く突起に口付けた。初めて背筋がゾクっとする感じに吐息が漏れる。少しざらつく感触に胸を愛撫される度に、下半身に熱が集中していくのが分かる。
「ふ、く……んん……っ」
「素直に声出した方が楽ですよ。気持ちはどうでも、身体は感じるのが当たり前ですから」
唇を噛んで声を殺す鈴の顎を指で撫でて息を促すが、首を横に振って断った。
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