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好きでもない人間に抱かれて反応してしまう身体への嫌悪感。
吐き気がしそうな程、血の流れる音が支配していく。この状況の逃げ方を考えようにも、再び蘇る足の痛みと浮かされた熱が邪魔をする。
「っ、やっ、やめろ……矢崎っ」
ガチャガチャとベルトを外され、動く足で抵抗するも簡単に押さえスラックスのファスナーを下ろされた。足を閉じたくても、間にいる矢崎がそれを止める。
「先輩って、どこも綺麗な色してますね。した事ないんですか?」
「矢崎……こんな、事は……」
「止めませんよ」
冗談めかして話す矢崎に静止をかけても、言葉の途中で低い声が遮った。
鈴を見る瞳が真剣で。
──遊びじゃなくて、本気なんだ……
そう理解した瞬間、目の前の彼が怖くなる。
行為への怖さよりも、彼自身への。
「あっ、ぁあ、ふ……くっ」
突然熱の篭る自身を口に含まれ、ビクっと足が震えた。
何もかも初めて与えられる感触。
下から舐め上げられ、親指で優しくこねるように押されたら、やり過ごす術を知らない鈴はただ声を押し殺す事も忘れて喘ぐだけ。
拒絶と甘い息を。
「んっ、は、ぁっ、んあぁっ」
「狭……ちゃんとほぐさないと駄目ですね」
「嫌、だ……ぁ、抜いて、もう、嫌……っ」
徐々に追い込まれた熱を親指で止められたせいで射精できず、今度は体内に異物感を感じて目を開いた。中でうごめくのが矢崎の指だと認識し、異物感の気持ち悪さと疑問がぐるぐると回る。
「仕方ないですね、一度イきます?」
「は、ぁあっ、ふ……あぁっ」
指を増やしても強張って緩みそうもない蕾に溜め息を吐き、白濁を溢し続ける自身を再び扱く。数回上下に擦っただけで限界だったそれは勢い良く果て、ビクビクと痙攣しながら中にある矢崎の指を締め付けた。
「溶けそうなぐらい熱いですよ、先輩の中」
「ぁ、や……、言わ、ないで……っ」
射精感で朦朧とし、完全に怯えている鈴には、いつもの凛々しさも何もなかった。
ただ矢崎に許しを請う瞳。
そのギャップが嗜虐心を煽る。
鈴に見えない角度で口元を歪ませ、抱き締めるように前から背中に腕を回してネクタイに手をかけた。次第に緩む感覚に解放されるのか、と思い安堵の息を吐いたのも束の間、床に仰向けに寝かされ彼が見下ろす。
「矢、崎……」
働かない頭ではすぐに行動できずに、開いた両足を押し上げる彼の名を呼ぶ。
「同性愛って相手を思う気持ちだけの一番純粋なものだって言いますけど、僕はそうは思わない」
訳が分からないという表情をする鈴に皮肉な笑みを浮かべて告げた言葉に感じる行為への迷い。
一瞬矢崎の感情に気付けそうだったが、無理矢理埋め込まれた異物感に消された。
「ひっ、あぁぁっ」
「だって、酷く醜いんですから……先輩」
「離、せっ、痛……ぁあっ」
背中に回された腕できつく抱き締められ、深く奥まで挿入される。
指とは比べものにならないぐらいの圧迫。
精液の独特なニオイに鉄のニオイが混ざって鼻につく。
「あ……くっ、ぅん……んぁっ」
性急に抱かれて背中が軋みそうな激痛と時折掠める敏感な場所への刺激が入り交じり、無意識に肩にしがみついて爪を立てた。
「ああっ、はっ、く……ぅっ」
快楽を与える動きではなく、ただ矢崎の自己満足の動き。
──ゼロ……
霞んでいく視界の中、金色の瞳の男を思い出す。頭に浮かぶのは自分だけに向けてくる笑顔だけで、途端涙が溢れて止まらなくて。
「……僕以外の事、考えないで下さい」
「あっ、ゃざ……あぁっ」
雰囲気が変わった鈴に気付き、思考を遮ろうと挿入を激しくする。再び鈴の性器にも指を絡め、揺さぶりに合わせて数回擦ると同時に果てた。
「ぁ……は、ぁ……っ」
ショートしたみたいに視界が弾け、身体の奥にも熱が流れ込む。詰めた息をひとつ吐き出して強張りを解くと、ズルっと力の抜けた手が矢崎の肩から滑り落ちた。
焦点の合わない鈴の顔を見下ろした矢崎がキスをしようと顔を近付けると
「……ゃだ……めて……」
顔を反らしながら両腕で隠し、泣いて懇願をする鈴の姿。気丈さも崩れ、弱く脆い雰囲気で目の前にいる彼に胸が痛み、自嘲気味に微笑んだ。
これ以上手を出しても、この人の心が壊れていくだけだ、とゆっくり身体を離す。
「……っ」
「……一生貴方は僕のモノにはならないんですね……」
鈴の衣服を正そうと手を伸ばした瞬間、ビクっと身体が震え、その反応に小さく呟かれた本音。
躊躇いがちにワイシャツだけを正し、そっと立ち上がって離れる。自分の服も正して鈴を一瞥した矢崎は、鞄を手にドアへと向かい
「……時川先輩なら、貴方をどう慰めるんでしょうね」
ポツリと落ちた一言。
ゼロの名前に反射的に顔を上げ、鍵を外して振り返らずに出ていく矢崎の背中をぼんやりと見送った。
「ぅ……っ」
無理矢理起こした身体が痛み、机の足に寄りかかる。
全身が重い。伝う汗も精も、何もかもが気持ちが悪い。
──アイツが来る前に直さなきゃ……
俯いて今の格好を確認し、だるい腕を持ち上げる。その手で床に放られたネクタイを掴んだが、そのまま動けなくなってしまったのは、まだ微かに温もりが残っていたから。
夢なら良かったのに、今目が覚めたばかりなら冗談だと笑えたのに。
しかし、自分の温もりは残酷にも現実を突き付ける。
次第に苦しくなる胸にぐっと握り締めて俯いた。
「ふ、ぅ……っ、ゼロ……っ」
目頭が熱くなり、ネクタイを握り締めたまま両手で顔を覆う。
染み込む熱が急速に冷えていく感覚。
気持ちを自覚した途端、こうなるなんて。
こんな自分がゼロの隣になんていられる訳ない。
今更好きだなんて、言える訳──
「ごめん……ゼロ……っ」
もっと早く素直になっておけば良かった、と思っても、もう遅いんだ。
バスケの練習試合も終わり、急いで生徒会室まで走る。勝った報告もしなきゃな、と考えながら疲れもそっち退けで軽く最後の階段を登りきると、不意に鼻につくニオイがして足を止めた。訝しげに眉間にシワを寄せて鼻を動かせば、それはどんどん深くなる。
ゆっくりと様子を窺いつつ歩みを進めるゼロに届く甘さ。
生徒会室に近付く度に濃くなる精と血のニオイ。
「鈴……」
ドクンっと心臓が跳ね、無意識に走り出した。部屋の前に立つと疑惑は確信へと変わる。勢い良く生徒会室のドアを開け、ゼロは中へ足を踏み入れた。窓の開いた室内はぱっと見では無人だが、鈴がいる事は確かで。
「鈴?」
名前を呼び、そのまま足を進めると、奥の窓の下に座り込んだ鈴がいた。
「……ゼロ」
「お前……っ、何があって」
息を飲む音と同時にゼロが近付いたため頭上に影ができ、それに気付いてゆるゆると顔を上げる鈴。心配気な表情で見下ろすゼロに苦笑を浮かべる。
「窓開けて座り直そうとしたら、足滑らせた」
きっと嘘とバレているだろう。
窓を開けて空気の入れ換えをしたが、嗅覚の良いゼロにはあまり効果はない。自分の身体に纏わり付くニオイも残っている。
目の前のゼロが混乱しているのも目に見えて分かるが、彼は何も言わず鈴を抱き上げた。
「……早く帰ろう、鈴」
優しく強く抱き締める腕が温かくて、もう涙も出ない顔を肩に埋めた。
ゼロを傷付けるのはこれで最後。
君ニ、サヨナラヲ言ウ練習ヲシヨウ──
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