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終業式も滞りなく済み、明日から夏休みが始まる。
とはいえ、生徒会の仕事もあるから、完全に学校から離れる訳でもない。大会や練習試合のある部活の応援であったり、後期の文化祭の内容をまとめたり、と意外と活動は多いのだ。
一応、夏休み初日は活動なしなので、ホッと身体の力を抜いて壁に背を預ける。
「鈴、夏休みの予定は?」
「週に二、三日は学校に行く。お前も野球部の応援は一緒に行くんだろ?」
「えー、それ以外にも一緒に行くって」
「それ以外って……後はバスケ部の練習試合ぐらいしか、知り合いいないだろ」
予定を確認しつつ、彼の申し出に首を傾げて見つめ返す。野球部は酒月がいるから約束したが、それ以外も休みを使って観に行くのは彼自身楽しいのだろうか。スポーツ観戦が好き、とか。
そう言うと、ゼロは優しく笑ってベッドに座る鈴の元へやってきた。ギシっと軋んだ音を立てて乗り上げ、覗き込みながら顔にかかる細い髪を梳く。
「ちげぇって。鈴と一緒にいてぇの。言わなきゃ分かんない?」
「ぅ……」
「一人でいたって、つまんねぇじゃん」
改めて間近でそう言われると恥ずかしい。
でも、一緒にいられる。
それを素直に口に出せず、照れ隠しに上目遣いで睨んだ。
「……公私混同して、怒られる」
「大丈夫だって。ほら、ちゃんと応援に行くんだし」
「…はぁ、バレないようにしとけよ」
「そこは勿論、鈴より上手いつもりだけど?」
相変わらず余裕の台詞に、言い返したいけど無理だと分かっているから、ぐっと飲み込む。
経験の差ぐらい理解している。それでも腑に落ちなくて、せめてもの腹いせに睨んでいると、約一週間ぶりに額にキスが落ちた。
「ほら、もういつもの時間過ぎてんぞ。寝んだろ?」
ゼロの指先を辿って見た時計の針は0時を回っており、次の日が休みだろうが基本睡眠時間を変えない鈴を気遣ったのだろう。鈴も何となくいつも通り「そうだな」と、寝る体勢になったものの。
「寝ないのか?」
促した割にはベッドへ入って来ないゼロに問う。一瞬、図星を突かれたような表情を見せた彼は、すぐ笑みで隠して
「あ……ああ、おう。寝るよ?」
「……何か隠してるだろ」
「いや、別に何も。何、俺がいないと寝れねぇ?」
明らかに様子がおかしいのに、誤魔化すみたいに茶化す彼をじっと見つめていると、「えっと……」と目が泳いだ末に観念した。
「今日、満月だからさ。寝れない日……なんだよな……」
「満月?」
「狼さんですから」
最初は意味が分からなくて首を傾げたが、苦笑する表情に思い当たった。
“満月は本能を呼び起こす”
お伽話って、あながち間違ってもないのか。
「もしかして、今までも一人で?」
「まぁ…でもほら、鈴の寝顔一晩中見れたし? それなりに楽しく過ごしてたよ」
本当は寂しかったはずなのに、無理して笑ってるみたいで。
独り眠れない夜を過ごしている間、何を考えていたんだろう。
きっと俺は種族の違いとか、自分の性質とか、そんな事を考えてしまう。
今まで気付いてやれなかった事が悔しい。
「……バカ」
「れ……」
小さく呟いて中腰で立ち上がった鈴は、目の前のゼロを引き寄せ、驚く彼にキスをした。まだ触れるだけしかできないけれど。
「こんな時ぐらい我慢をするな。恋人なんだ、巻き込んだって良いから」
「鈴……」
「狼男だろ。襲うぐらいの度胸を持て」
独りにしたくない一心で言ったものの、目を丸くしたまま見つめられて、今更自分の行動が恥ずかしくなった。内心慌てつつも冷静を装って誤魔化すように早口でまくし立てたのだが、それさえ嬉しそうに笑ってぎゅっと抱き締めてきた。
「積極的な鈴って、何か新鮮」
「べっ、別にそんなんじゃ」
「ありがとな」
遮ったのは、優しい響きを持った声。
冷たいけれど温かいゼロの腕に抱き締められながら、もう一度そっとキスを交わす。
「……何か、緊張する」
唇が掠める距離で呟くゼロに目で促すと、彼は小さくはにかんで答えた。
「二度目誘うのってさ、結構考えんだ。初めての時で嫌になってないか、とか……痛かった、かな……とか」
受け入れる方が辛いと分かっているから尚更心配なんだろう。優し過ぎる恋人に頬が緩む。
「鈴?」
「……嫌になっていたら、キスもしない」
あやふやな関係、というのは不器用な自分には無理だ。キスをされれば気持ちも身体も煽られるのは目に見えているから、もし身体の関係が嫌になっていたらキスもしたいと思わない。はっきりと。
言外にそう込めた鈴の言葉に、「そうでした」と笑うゼロ。例の一件でこういう事に潔癖だと知っている彼は理解が早い。
「俺に気を遣いすぎだ」
「うん、でもやっぱ、一緒に気持ち良くなりてぇじゃん。俺は、鈴とシて良かったから」
そのストレートな愛情表現に顔を真っ赤にした鈴は、口を数回パクパクと開閉させ、そして
「その……お前の手、好き、だから……大丈夫」
何とか気持ちを返そうと、声に出したのがこれ。
事実そうなのだ。彼の大きな手が触れる場所全て、ジンジンと熱を持ったり、温かい気持ちにさせてくれたり。今も驚いた顔から笑みに変わったゼロに撫でられる腰から、ゾクゾクと快感が走る。
「俺の手、好き?」
「……ん」
「感じんだ?」
「ぁ……ぅん……」
楽しそうにいちいち確認をしてくる彼に素直に頷く。もう誤魔化しとか、照れるとか考えるのが面倒なぐらい、これだけで気持ちが良い。
思い出させるようにゆっくりと肌に感触を馴染ませる手が衣類を剥ぎ取って、最後の一枚を床に落とした。それから首に顔を近付けてくるゼロを、鈴はまだだと言わんばかりに止める。
「……服」
「ん?」
「俺ばっかり」
「あ、ああ。恥ずかしい? ちょっと待って」
羞恥を隠すために少しぶっきらぼうに伝えると、気付いたゼロがクスクスと笑いながらTシャツを脱いだ。
無駄な脂肪のない筋肉で引き締まった綺麗な身体を久しぶりに見て、やはり自分の身体は貧相だと思う。今まで意識してこなかったからな。柔らかさなどとも程遠い。でも、そんな身体でも、彼に求められると嬉しい。
「鈴……キスしてい?」
サラっと額の髪を梳かれると意識して恥ずかしくなるが、コクンと一つ頷いて答える。
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