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1話
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「へぇ、そうなんだ。それは良かったね」
彼らはお互いに顔を見合わせてからこちらへと顔を向けて照れくさそうに笑った。
うん、お似合いだ
二人の様子を見て改めてそう思う。僕はゆっくりとコーヒーを啜った。
「おめでとう」
ここはメゾン・ド・ソレイユ。東京郊外にある単身者専用のマンションだ。最寄りの駅からも少し離れたこの場所は、曽祖父の時代から下宿屋を営み、去年僕が祖父から引き継いだ。引き継いだと言っても下宿屋としてはもう何十年も昔に閉鎖しており、じいちゃんが亡くなった時に相続したのが僕の長谷川朋樹で、色々考えた結果、建て替えて単身用のマンションへと蘇らせた。間取りは少し広めの1LDK、ペット可、Wi-Fi完備、駅から徒歩20分と少し遠いのと管理人を僕が務めることになったので家賃は少し安めに設定してある。一階は、幼馴染が経営する喫茶店兼夜はバーの店が入り、あとはエントランスとエレベーターホールと管理人である僕の部屋、ワンフロア5部屋✕4階分、そのうちの一つは喫茶店を経営する幼馴染の吉敷太一の部屋。
「幸せそうだねぇ」
キッチン側から肘を付き、ニヤニヤと口許を緩ませ、めでたい事だから俺の奢りだと、いつもは守銭奴の店主にあるまじき太っ腹な言葉に驚いて瞳を瞬かせるも、太一も喜んでいることに気付いてその言葉に小さく頷いて、窓から見える、今しがた店を出て行った二人の姿を見送る。大学生同士の彼ら2人から同時に恋の相談を受けていた身としては、肩の荷が降りたような気がして少しほっとして、息をついた。
「両思いだったのにねー」
「傍から見てりゃわかりやすかったんだけどな。本人たちはわかんないもんなのかね」
僕も恋愛初心者だけど、多分コイツもだろう。二人してわからないなと結論付けて太一が新しく持ってきてくれたコーヒーに手を伸ばした。
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