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16*番
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1度は来たことがあるはずの場所も、
健太君の隣ではまるで別物のように思える。
…というか、あの日は多分それどころじゃなかったんだろう。
エンジンを切るやいなや俺の腰を引き寄せる大きな手に、抗うことなく身を委ねた。
暗闇の中でも鋭く光る
猛獣を思い起こさせるほどの眼光を目の前にして
息は上がり、
触れられた箇所に熱を帯びながらも
この上なく満たされる。
「…やっぱヤダとかは…っ、もう聞かないんで。」
「っへへ、そんな事言わないし。
ん…いいよ゛っ、ぁア゛────っ。」
俺の返事もまともに聞かないまま突き立てられた刃に身体が強ばって
襲い来る、これまでに感じたことも無い強い痛みと
それから涙が出るほどの幸福感が俺を侵食した。
食い込んだ歯の痛みは
健太君の気持ちの大きさだ。
俺なんて簡単に包み込んでしまう健太君の腕は、
俺をどこまでも強く、優しく抱き締めてくれる。
理性が今にも消え去ってしまいそうな
マトモな意識のギリギリの縁で
「…俺“も”愛してる。アリスさん。」
蕩けそうなくらいに甘い掠れた声が
痛みと共に脳裏に強く焼き付けられた。
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