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16. 2
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「そう言えばさ、千里が大学に行こうなんて
言うんだよ」
「……へぇ…え?行きたくないの?」
「…行きたくない訳じゃないけど
大学行くには大金が必要だから
大した目標もなく行くくらいなら
そのお金で1人暮らしして、仕事した方が
俺らしいというか…」
「お金があれば行きたいの?」
「……そりゃ、大学行っといた方が、就職にも
有利にはなるからね。でも大学に行ってやりたい
事もないし、無駄といえば無駄かなって…」
「お金つくってあげようか?」
「へ?」
「そしたら千里君と大学行けるんでしょ?
お金くらいだったらどうにでもなるよ」
「………」
タロウは今スゴいことを言っている。
まさに悪魔の囁きだ。
たしかに人の記憶を操作できるタロウにとって
俺1人の学費を作るくらい簡単な事なのかも
しれない。
でも…これは…。
「それはやっちゃダメなやつだ…」
「何で?」
「それやられたら俺、一生タロウに依存して
何の努力もしないダメ人間になる…
もっと、もっとって…結局全部タロウに頼って
そんな自分にいつかウンザリして
… 死にたくなる」
「はは、大袈裟だな~
でも 死にたくなるのはまずいね」
タロウは呑気に笑って、俺から目を反らした。
「晃太は根が真面目だもんね
勉強とかも、俺を使えばいくらでも ずるして
いい点数とれるのにしないし」
「タロウは頼んだら何でもしてくれちゃうって
分かってるからな…でも本当に必要な時は
ちゃんと頼るよ」
「うん…」
タロウが両手を広げて少し照れたように笑った
俺も大袈裟に手を広げてからタロウに抱きついた。
そのまま、タロウを枕にするようにソファーに
倒れる。
タロウが子供をあやすように俺の頭をポンポン
撫でて、俺をあまやかす。
「千里君…気まぐれで適当に言ったんじゃないよ
晃太の事を本気で思ってるんだ
だから晃太が色んな事情を抱えてるのも
分かってて、誘わずにいられなかったんだよ」
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