アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
8
-
この頃、Ωを守る研究はあまり進んでいなかった。
逆にいかに効率よく孕ませるか、という人権を無視した研究や、出産時の母体の生存率を上げる研究を、政府は推進していたからだ。
だが、坂上が生存率の研究をするようになったのは、自分を産む事によって亡くなってしまった母の影響が大きい。
写真さえ無い母親。
父親からの愛情を感じられなかった俺は、代わりに母への憧れを強くしていた。
真矢と出逢ったのは16歳の属性検査でαと判定された日だった。
その日は暑い日だった。
αと判定された子ども達は、高度な教育を受ける為に寮生活になる。そこで集団行動の大切さや競争心、そして愛国心を育てていくためだ。
父親に検査の結果を報告した後、坂上は近所を散歩する事にした。
ご近所のおばあさんが育てた広大なひまわり畑は、坂上のお気に入りの場所の一つで、どうしても見ておきたい場所だった。
セミの鳴く声が雨のように降り注ぐ林を抜けて、ひまわり畑に入った。
坂上の父親の仕事は、全国を転々とする裁判官だ。
俺が居なくても何も彼の生活は変わらないだろう。
そもそも、最初からαとして居なくなると分かっていた子だ。父が望んだ結果だ。
判明した属性を告げても、彼は顔色ひとつ変えなかった。
それが寂しいのか悲しいのか自分でも分からない。
良かったな、と言って欲しかった気もするし、頑張れよと励まされたかった気もする。
だが、そのどちらも無かった。
当たり前のように頷いて、それで終わり。
子ども心に、虚しいという感情を抱いた事を覚えている。
・・・俺の母親は、どんな人だったんだろう。
父を愛していたのだろうか。
その頃の俺は、国から買った母親だとは知らなかった。
純粋に会ったことのない母への憧れしかなかった。
ああ、綺麗だ。
見上げるくらい大きなひまわりには、蜜蜂が遊びに来ている。
これも見納めかと、不思議な気持ちで眺めた。
と、
『あ!!』
背後からの子どもの叫び声に続いて、わんわんと手放しで泣き出した声に、まだ16歳の坂上は目を丸くした。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
8 / 15