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その時の真矢は、一言でいうと忙しかった。
「・・・〜ッ!!」
額を強打して、目の前に星が散った。
そして起き上がった勢いのまま、ベッドに倒れた。
両手で額を押さえると、左腕に管が付いていて、ギョッとして見上げると点滴に繋がっている。
ええ?!
腕を見た時に視野に入った腹にびっくりした。
シャツは大きく捲れ上がり貧相な腹が剥き出しになっていたからだ。
それに甘い香りが漂っていて、嗅ぐと下半身がズンッと重くなって大きく喘いだ。
?!
きょろきょろと見回すと、真矢の足元で額を押さえて呻いている白衣の人がいて、さらに驚いた。
誰?!
っていうか、何?!
熱があがったのか頭がくらくらする。
額は痛いし晃さんとの夢は覚めちゃったし、甘ったるい匂いを嗅ぐたびに自慰したいし、もうもう、軽くパニックだ。
「・・・ってぇ。」
額を摩りながら立ち上がった白衣の男性を見て、真矢は目を見開いた。
「・・・真矢、感動の再会が台無し。」
笑いながらベッドを見下ろした男性は、真矢が逢いたくて堪らなかった人物だった。
「・・・あ、きらさん?」
声が上手く出なくて掠れた変な声になったのに、夢の中よりも素敵な男性になった晃さんは、優しく微笑んでくれた。
「そう。逢えたね。」
晃さん!
思わず手を伸ばすと抱きしめてくれた。
また逢えた嬉しさに、真矢は手放しで泣いた。
「・・・よしよし、よしよし。」
あの時と違うのは、涙が全然止まらないという事。
そして額をハンカチで拭うかわりに、こめかみにキスをしてくれた。
「真矢、辛かったね。」
うん、辛かった。
「よく頑張ったね、偉いね。」
うん、うん。
声にならなくて、晃さんの胸に縋り付いた。
この暗闇の中で、ようやく真矢の目の前に一筋の明かりが差し込んだのだ。
「・・・ね、真矢。正直に答えて。」
どれくらい経ったのだろう。
ようやく涙が枯れた頃に、晃さんが質問した。
「いま、熱以外に体調が悪いところはある?」
「・・・。」
ほんの少し体を離して、顔を見上げた。
「頭がくらくらする。」
「頭ね?お腹が痛いとかは無い?」
首を振った。
「分かった。じゃあ、すごくエッチな気分になってない?」
俯くことで答えた。
恥ずかしくて顔を上げれなかった。
「発情期になったみたいだね。大丈夫、恥ずかしい事じゃないから。」
俯いた頭を撫でてもらって、少し気分が和らいだ。
「医学的な話をするとね、Ωには月に一回、数日間こんな気分になる日があるんだ。」
右手の親指を噛んで、改めて湧き上がってくるセックスに対する衝動を抑えていく。
晃さんから出てくる匂いに、もうおれの下半身は濡れていた。
「まだ初めての発情期だから、ひとりでも耐えられるかもしれないけれど、もっと体が成熟してきたら、セックス無しでは耐えられなくなる。」
悲しい現実を突きつけられて、枯れたはずの涙がぽろりと溢れた。
「Ωに対する研究はまだ進んでいないんだけど、一般的には、精液を注ぎ込まれる事によってその症状が緩和するんだ。」
成人男性の一回の射精で排出される精子の量は、平均2mlから5mlとされている。Ωの場合、形成された子宮へ15ml以上、精子を注入する事によって、発情期を終わらせる事が可能とされていた。
このため、家族として赤ちゃんを迎える予定のないαが、ひとりのΩに対して3人で相手をする事もあった。
「でもね、真矢。」
肩を掴まれた。
「あの約束って覚えてる?」
おずおずと顔を上げると、晃さんは真剣な目をしていた。
「・・・結婚?」
「そう。あれって、まだ有効かな?」
胸がギュッと痛くなった。
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