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坂上は真矢の部屋から出ると、これから先の事を考えていた。
「坂上先生、梅木さんは如何でしたか?」
「熱が出ているので暫くは安静ですね。他のD rにも相談したいと思います。」
ふたりのD rに今後の事を相談する必要があった。
真矢をこの施設から出すには、相当の準備が必要となる。
また同時に他のαから守る必要もあった。
Ω属性との婚姻自体は可能だ。
Ωが産んだ子を自分の子どもとして育てる場合は、結婚という形が取られる。
だがその場合でも、Ωの放つフェロモンで他のαが惑わされないよう、産院から出る事は許されてはいなかった。
だから、両親は新婚生活を営んでいない。
子を成す為に発情期の間だけ通って自分が産まれたのだ。
まずは、世論を動かなさければ・・・。
真矢だけではない、各地の産院に集められたΩの実態を広く発信しなければならない。
そして人権を守る活動をしなければならなかった。
一筋縄ではいかない。
だけど、やれないことはないはずなのだ。
同期の中でも、Ωを襲わないと決めている人は多い。
その彼らの出生の多くは、Ωから産まれた人達だ。
皆、産みの親を亡くしていた。
きっと、彼らが賛同してくれれば世界は変わる。
Ωを産院に集める制度が始まったのは、1970年、つまり、30年が経過している。
その間に数多くのαが産み落とされた。
世の中のαのうち、ここに通う 産院産まれのαはどれくらいいるのだろうか。
データーの解析をしなければ、闇雲に動いても潰される。
慎重に、怪しまれないように息を潜めて、そして確実に潰す。
「分かりました。では何か決まりましたらお知らせ下さい。」
「はい、よろしくお願いします。」
廊下には、沢山の鉄扉が並んでいる。
そのひとつひとつに、真矢のようなΩが閉じ込められている。
扉に『治療中』の紙が貼られている部屋は、発情期を迎えたΩの部屋だ。
どんな治療をされているか、想像するだけで吐き気がした。
死亡率を下げることだけが、俺の使命じゃないんだ。
彼らの自由になる権利を守ってやらなければ。
部屋にいたのが真矢だから必死になるわけではない。
今まで目を背けていた現実を、突きつけられた結果だ。
監視室に戻って行った彼の背中を見ながら、坂上は拳を握りしめた。
きっとβである彼らも、違和感を感じている人はいるはずだ。
誰が味方になってくれるのか、慎重に見極める必要があった。
そして、この時から坂上の戦いは始まった。
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