アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
1
-
――――時は、世紀末。
あなたの身近に迫る危険を見抜け!
世紀末を乗り越えるための知恵を大特集!!
頭にかかる電車の吊り広告を避けた拍子に、不安を煽る箔押しの見出しが目についた。
190cm超の長身で、周りより高い位置に頭がある三谷と広告の距離は近い。
ズレてしまった伊達メガネを指で押しあげつつ、つい流し読んだが。
隕石墜落に宇宙人襲来、もしそれが本当に起こることなのだとすればどれも人類にとって一大事。
それを、大衆紙の記事を読んだだけで自分になら乗り越えられると思える人間はある意味幸せだなと達観した気持ちになった。
不安を煽られる人間が多いから、そこにつけこむ新興宗教や怪しい薬の売買団体が続々乱立。
近年、警察の手が回らない死角が増えている。
刑事部長がいくら豪腕でも、毎度毎度テリトリーを越境して宗教団体絡みの事案をこちら側に引っ張ることなんて本来出来ない。
それを、今年に入って半年の間に十件超回されている。
毎度毎度、「コレは文哉に任せよう」と算段した叔父は、本人の同意なく交番勤務のシフトを直々に調整し待ち構えている。
本人は、俺を直属の部下にした方が調整が楽なんだがなぁとボヤいていたけど、十分手際が良い。
「これはあくまで自分からの特命だ」と表向きの理由を念押しされ、今回は宗教団体の内定調査のために極秘潜入しろと仰せつかった。
公安の案件に、刑事部ですらない所轄が首を突っ込む不自然さ。
三谷が抜ける度に上司は不満げだが、刑事部長には逆らえないので有耶無耶にされている。
三谷がこんなことを始めるようになったのは五年前からだ。
続々振られる仕事の数を数えるのは、早い段階から止めていた。
数のノルマがあるわけでは無いし、数をこなしたところで終わりが近づいている実感が沸かないからだ。
今回も細かいことは考えず、目の前の案件を精査するだけだ。
三谷は、吊り広告から今朝渡された資料へ切り替え頭の中で内容を反芻する。
現世に降臨した創出のΩを教祖と崇め、人々を救うべく活動の輪を広げている、とか。
出だしからしておかしい。
Ωなんて今どき表立って使う単語じゃない。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
1 / 11