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7.言い合い
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「雨依く〜んっ!パース!」
「はい」
(ボールを受け取りました。目前に敵1人、後方に敵4名を確認。ゴール位置まで約3メートル)
「…うわあすごいね、あの青条って男の子」
「あの外国人の子でしょ。見事な身のこなしだよね〜。全国男子バスケ大会出たら普通に優勝しそう」
「聞いた話、頭も良いらしいよ。有名なんだって、青条雨依って。テスト成績毎回学年トップらしい」
「ひえ〜〜そんな漫画みたいな人がいるんだ。なんか雰囲気も1人だけ大人びてるもんね。見た目がカッコイイのはもちろんだけど、私らと同じ中学生には全然見えないよねぇ」
ピーー!
(試合終了の音が鳴りました。勝敗は勝ちのようです。)
「雨依くん流石〜!雨依くんのお陰だよー!」
「いえ、僕は的確に動いたまでのことです。」
「その的確が中々出来ないんだよ!すごいなぁ雨依くんは」
体育の授業が終わり、次は昼休みです。
僕は肩にかけたタオルで少々の汗を拭きながらお昼に食べる遥のお弁当を想像して少しにやけます。
「あの、青条雨依君」
そのまま教室に向かいながら外廊下を歩いていると、ふと見知らぬ女生徒に声をかけられました。?彼女は誰でしょうか。
「あなたは?」
「えっ?あっ、わ、わたしはっ…、同じ3年の立花結です!」
(立花結。知らない名前ですね)
「立花結さん、僕に何か用ですか?」
すると彼女はこちらを見てかあっと顔を真っ赤にさせました。…何故でしょうか。
「あの、」
「す、好きなんですっっ!!」
(好き。なるほど、そういうことでしたか。)
「よ、よよよ良かったらわ、わたしと、つ、付き」
「僕には何年も前から大切にしたい心に決めた人がいます。」
「……えっ?」
「立花結さんの気持ちには応えられません。本当に、申し訳ありません。」
彼女は僕を見てしばし固まっている様子でした。
「立花さん?」
「…えっ、…あ…こ、こちらこそ、申し訳ありませんでしたっっ!」
(彼女は猛スピードで僕の前から走り去っていきました。彼女は僕を好きと言いましたが、一体どこが好きだと感じたのでしょうか。)
〝お前はそもそも生まれるべき存在ではなかったんだ!〟
…さて、昼休みが終わってしまいます。あの人の作ってくれたお弁当を食べる時間が無くなってしまうのは僕にとって死に値します。
「ただいま帰りました。」
その後家に帰ると遥は案の定仕事でした。僕が今日もまた手を振るうしかないようです。
(…ところで、遥は他人にあのように好意を持たれたことはあるんでしょうか。そしてその場合遥はどのようにして対処しているんでしょう。)
「…ふむ。今日にでも早速聞いてみましょう」
ー
「突然なんだよ、告白されたことはあるか?なんて…雨依」
遥はふう、とネクタイの紐を緩めながら食卓の席につき半ば呆れたように言いました。
「無いんですか?」
「…あるよ、1回だけ」
「その時何とお答えしたんですか?」
「……雨依、ナイフを俺に向けて返事を待つのはやめてくれないか。」
「これは失礼しました。」
「…。…断った、そういうことに興味無かったしな」
(興味が無い。)
「つまり性欲がないのですか?」
「…っ、思春期真っ只中だろう子がっ親に冷静な顔つきで聞いてくるようなことじゃあないっ!」
(おや…。僕としたことが何やらミスをしてしまったようです。遥が久々に僕にキレました。仕事のストレスもあるのでしょうか。遥がキレると中々に怖いのです)
…とすると。
「なら、性欲はあるが、自分でいつも処理している為、恋人などのそういった類いは興味が無いのでいらないということでしょうか?」
「だーーっっ!おい雨依お前っっ一旦黙れって!!」
遥の雷が久々に落ちました。
「遥」
「…黙れ、無神経な質問ばっかしてくる奴は俺は嫌いだ」
「申し訳ありません。遥にとってそのように機嫌を損ねる話だとは思わなかったのです」
「お前なあっっ…。お前は毎回毎回ストレート過ぎんだよ。オブラートって言葉を知らねえのか」
「オブラート。知っています。日本ではデンプンから作られる水に溶けやすい半透明の薄い膜のことを指します。(※Wikipediaより)」
「そうじゃねえよっ!オブラート自体の話をしてんじゃねえよ!」
「?そうなのですか?なら一体なんの…」
「もういいっ!俺は寝る」
遥は言うと、ソファから体を起こして自分の部屋へ早々に向かってしまいました。
遥……。
コンコン
「遥?」
「…」
「部屋に入ってもよろしいでしょうか?」
「駄目だ」
「…遥…」
「…」
「……分かりました。」
「…」
「僕は遥の前から去ります。遥にとって僕の存在が迷惑なのでしたら…それは僕の本望ではないです」
「そんな規模の大きい喧嘩してるわけじゃねえだろ今はっ!!」
(遥が大声を上げながら部屋のドアを開けて出てきました。目の前に立っている僕を見て遥は眉を寄せて悔しいような悲しいような怒った顔をしていました。)
「……遥」
遥は僕の右腕をぎゅっと掴み強く握りました。
「……畜生…」
「…遥。泣いているのですか?」
「何でだろうなほんとによぉ…」
「…」
「ごめん雨依。お前に悪気は無かったことはわかってたのに俺」
「何故遥が謝るのですか?僕が遥を泣かせたのではないのですか?」
「何も言うなっつーのもう!」
「……はい。」
「…」
「…遥、やっぱり聞いてもいいですか?」
「…」
「何故泣いているのですか?」
「……ごめん…雨依…」
「何故、僕に謝るのですか?」
「……俺が全部悪いからだ」
遥はその後ぐったりと僕の胸に体を預けるようにして倒れました。遥は体を触って分かるほどの高熱を出していました。
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