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「おい、そっち行ったぞ!」
飛び交う弾をよけながら、レイは街を駆け抜ける。
「くそっ!捕まえろ!FRΩの幹部だぞ!」
「どこに消えた?」
ふわり。
戦闘中とはとても思えないような軽いジャンプ。
しなる背中。
放たれる弾。
パン、と音が聞こえ、男が倒れた時、レイはすでに三軒先の家の屋根に着地していた。
*
「戻った。」
FRΩは、人権と自由を求める集団。
ここ、ジャパニア国はAI技術の急速な進歩により一躍世界の最先端を行く先進国となった。
しかし、急激な発展に伴い、人口が爆発的に増加、土地が足りず、水も食料も十分に確保できなくなった。国内の治安は悪化、国民から批判を受けた前の国王の後を継いだ現国王は、とんでもない策を打ち出し、ジャパニア国は混乱の渦中に放り込まれた。
人類は約1000年かけて、子孫を多く残せるように進化した。
それこそ今この世界を支配するバース性であり、ジャパニア国内戦の原因ともいえる。
バース性とは、男女とは別の性別概念だ。
α、β、Ωの三種からなり、αは何においても優秀で、Ωは男女を問わず、子を身ごもることができた。しかしΩはその体質ゆえに長く生きられないものも多く、希少な存在であった。
βは最も普遍的な性で、人口も多かった。
現国王は、優生維持保護法というものを打ち出した。
それは、簡潔にいえば、体の強いΩを保護、隔離し遺伝的に優秀なαと交尾させ、優秀な子を残させる。
体の弱いΩ=出産に耐えられないものや、年老いてすでに生殖能力のないもの、遺伝的にあまり優秀ではないβは排斥する。
そんな無茶苦茶な法律がまかり通ってしまった。
それはレイが8歳の時に制定されて以来、31年間一度も変わっていない。
そのため、法に反対する国民と、王に賛同する国民との間で諍いがおき、内戦が続いていた。
レイはΩだ。
そして体は人一倍丈夫。さらにΩでありながら、優秀な遺伝子を持っており、国王はレイをどうしても王宮に入れたかった。
レイが10歳の時、バース性の報告が上がってすぐ、王宮からの迎えがきた。幼かったレイは恐怖を抱き、王宮入りを拒否した。
その時レイの隣には幼馴染のβがおり、レイをかばうように、大人たちの間に立ってくれた。
しかし、次の瞬間。
はじけ飛んだ赤を、レイはよく覚えている。
「レイ、報告。」
「…見てただろ。」
「ほーうこーく。」
「チッ。」
過去の経験から、レイは人を信用しない。
頼れるのは己のみ。
αは特に、大嫌いだった。
「俺は言ったよな?お前は特殊な立場だから、ここにいる以上は俺の指示に従えと。」
王に反旗を翻すこの集団、FRΩのトップはα。
不本意ながら、レイは彼のいうことを正しいと思っていたため、最低限従っている。
彼のいう特殊な立場というのは、王から狙われているΩであるということ、そしてΩでありながら、発情期がこないということである。
Ωは子を宿すための体の機能として発情期というものをもっている。
発情期とは生殖に特化するための期間だ。
本来は、一生のパートナーである番―αとΩの間にのみ結べる関係―の相手を見つけ、その番と子をなすときに重要な機能なのだが、それがレイにはない。
いや、消えたというほうが正しい。
10代で発情抑制剤を大量服用したレイは発情期がうまく機能しなくなっていた。
「お前にも、幸せを選び取れる日が来るんだ。それまで、これ以上自分の体を粗末にするような真似はするな。」
レイは答えることなく拠点を出て再び街に出た。
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