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03
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この男は、何を言い出したのかと思う。
服装からして、王直属の護衛、国軍の幹部級の男だ。
おそらくα、年齢はまだ若い。そんな男が、要はレイと手を組みたいと言っている。
しかしこれは、彼にメリットがない。レイたちはもともと反抗的だが、彼は一度王に忠誠を誓っている。反逆罪で捕まれば、重い罪に問われるだろう。
「あなた方は知らないかもしれませんが、東の国土の砂漠化が進んでいます。度重なる薬銃の使用が原因です。遺伝子組替薬は生態系をも破壊します。それから、王はいずれαだけの国にするつもりです。」
Ωの利点は繁殖能力に優れていることだ。
それを捨ててまで、遺伝子的に優位な人間を残すつもりなのだろうか。
それに、今の国民の男女分布は、圧倒的に男が多く、Ωがいなければいずれ人口が減りすぎてしまうだろう。
「王は優秀なΩを王宮に集め、実験を行っている。αだけを産ませる薬が、もうすぐ出来てしまう。」
この男の嘘にしては手が込みすぎている。
情報としては信じがたいが、ありえなくはない。あの横暴な、人を人と思わない政策ばかり出してきた王のことだ。
「……お前の望みはなんだ。」
「国を守りたい。」
「綺麗事でまとめんな。そのためにてめえは何しようとしてんのか聞いてんだ。」
「……クーデターだ。」
*
「それで、そいつの名前は?」
深夜、0時を迎えようかという頃。
拠点に戻ってきたレイは昼の話をした。
「名前はイーリス。22歳、独身、番なしのα。戦闘力は中の上、体力は軍の中でも抜きんでている。身長約190cm、勘がいい。俺の動きをある程度予測してきた。」
「レイの動きをか?なかなかだな。そんなやつが、クーデター?」
「情報について探ってみたが、どうやらすべて事実らしい。イーリスは本気で起こす気だ。」
「それで、味方に付くのか。」
「は?知らねえよ。それ決めんのお前だろうが。」
レイはそこまで話すと、拠点の外に出た。
夜、レイは眠らない。
建物のすぐそばにある大樹の上に登った。
遠くには煌びやかな王宮が見える。
今頃、イーリスは王に傅いているのだろうか。
レイを見ても、捕まえようとせず、逃げることなく、敵意も向けることなく、話したいなどと言ってきたαは初めてだった。
触れられたくない、心の柔らかいところに、触れられたような気持ち悪さ。
頑丈に固めて、取り繕ってきたΩとしての本能が呼び覚まされていくようで、居心地が悪い。
αとともに生き、愛を育み、時には守られ―。
「はっ……」
αは嫌いだ。
奪うことしかしない。
なんでも一人でやるしかない。
自分を守るためには、強くなければいけない。
無力な人間は搾取される。
そんな世界はもうこりごりだ。
だから、手を貸してやるだけ。
それ以上の期待はしない。
いつだって信じられるのは自分だけだ。
強くあらねば、生きていけない。
それが唯一、"生きている"ことの証明なのだから。
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