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しばらく沈黙が続いた後、蓮が口を開いた
「こーた」
「うん?」
「おねがい…きいて」
「なに?」
「……殺して」
息が詰まった
自殺願望があることは知っていたけどこんなことを言われるのは初めてだ
「むり、だよ」
「お願い、殺して」
「蓮、それはだめ
できない」
「なんでよ!
俺は何のために生きてるの?
バイトもクビ、採用は取り消し、パニック障害にうつ病に不眠症の人間なんて生きる価値なんて…!」
今までこんなに感情的になっている蓮は見たことがない
こんなにさせるまで放っておいた自分にいら立って自己嫌悪した
仕事、半休とって話聞いてやれればこんなに蓮が傷つくことはなかったかもしれないのに……
ひとまず抱きしめて落ち着かせるように背中をトントンと叩く
腕の中から出ようと暴れている蓮を少し強引に押さえておでこに一つキスを落とした
「俺のために生きてよ」
「え…?」
「養うから俺のために家で家事をしてほしいな」
「でも……」
「お願いだから死ぬとか殺せとか言わないで
そんなの俺もしんどいよ」
「だけど、おれ、なんで生きてるか……」
「俺だってなんで生きてるかなんてわかんないよ
だけどね、蓮がいて今が幸せで、これから先も蓮と一緒にいられる、って考えたらそれだけで生きる意味になる
蓮は違う?」
堰を切ったように泣き始め、崩れ落ちた
「わかんないっ……
でも、ひつようっ、ないって」
「必要ないって言われたの?」
「かいしゃっ、つぶれ、でも、おれが」
「会社が潰れたのは蓮のせいじゃないでしょ
それは会社の責任」
「うう、ん、でもっ」
「蓮のせいじゃないよ
蓮のせいじゃない」
自分のせいだと何度も繰り返しながら大粒の涙をこぼす
どうしたらいいかわからなかった
もちろんこれから先も一緒にいるつもりだし、蓮と結婚するのは自分だと思っている
それでも蓮の人生を決めることも導いてあげることもできない
「蓮のせいじゃない、蓮は悪くない」と慰めの言葉しかかけてやれない自分に腹が立った
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