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千里眼の老婆8
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(恐らくは、向こうにも動けぬ事情がある筈だ。そうでなければ、リアンジュナイルの制圧にこうも時間がかかることはないだろう。その事情とやらが判るのが一番なのだが、……その辺りは本丸に潜入中の黒の王に任せるべき、か)
「さて、霧は晴れたかい?」
老婆の言葉に、王は苦笑した。
「これでご老人の知っていることの一握りだというのだから、困ってしまうな。どうやら、事態は我々が思っている以上に切迫しているらしい」
「それが判っただけでも、来たかいがあったというものじゃあないか」
「まったくもって仰る通りだ。ご尽力、感謝する」
そう言ってからもう一度深く頭を下げ、王は立ち上がった。
「おや、もう行くのかい? 久々に会ったのだから、もう少しゆっくりして行けば良いというのに」
「お誘いは大変嬉しいが、そうはいかない。急ぎ、このお教え頂いた情報を連合国で共有せねばならんのでな。残念なことに薄紅の国で遊ぶ時間もなさそうだ」
「そう急ぐことでもないんじゃあないかい? 急いてどうなるものでもないよ」
「いや、実は近々キョウヤがグランデルに来ることになっていてな。なんとしてでも、それまでに情報共有くらいは済ませておきたいのだ。そうしないと、心置きなくキョウヤとの逢瀬を満喫することができん」
大真面目な顔で言ってのけた王に、老婆が今日一番の呆れた顔をする。
「わざわざ自分の国に招いてデートとは、楽しそうで何よりだねぇ」
「いやいや、別にデートではないぞ。うちの魔術師が、キョウヤに魔法やら魔術やらの指南をすると言って張り切っていてな。どうやら、キョウヤの魔法などに対する知識が著しく不足しているのを案じているようだ。実際、仕組みを知らないよりは知っている方が、対峙したときに多少は対応できるだろう。という訳で、キョウヤ専用の魔法魔術講座のようなものを開くことになっているのだ」
王はそう主張したが、老婆はやはり呆れた表情を浮かべたままだった。
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