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千里眼の老婆9
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「まあそんな訳なので、私はこれで失礼する」
そう言ってさっさと身を翻してしまった王の背に、老婆が声を投げた。
「こらお待ち。まったくせっかちな男だねぇ。最後にひとつだけ話を聞いてお行きよ」
その言葉に、扉のドアノブに手を掛けたまま、王が振り返る。まだ何か用かとでも言うように軽く首を傾げてみせた王を見つめ、老婆は深々とした溜息を吐いた。
「お前さん、自覚はおありかい?」
「自覚、とは?」
全く心当たりがないといった風な王に、老婆は再び小さく息を吐き出した。
「鈍感なのは相変わらずだね。……まったく、目障りなくらいにきらきらぴかぴかと光り輝きよって。鬱陶しいことこの上ないよ。その様は一体いつからだい?」
「いつ、と言われてもな。……そんなにきらきらぴかぴかしているのか? 光源になった覚えはないのだが」
「頭の悪い返しはおやめ。腹の立つ男だね。……儂は確かに言った筈だよ? お前さんのそれは壊れた蛇口のようなものだ。一度緩んでしまえば、もう二度と締まることはない。だから精々緩まぬように気を張りなさい、と」
老婆の言葉に、王が困った表情を浮かべる。
「相変わらず婉曲的な物言いをする。確かにそう言われた覚えはあるが、ご老人の言葉選びはいまいち判然とせんのだ。蛇口というのが何のか、私には検討もつかん。尤も、過干渉を防ぐための手段だと言うのならば、どうこう言えたものではないが」
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