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城下町デート2
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「っ、へ、へーか!?」
王にとっては慣れたものだったが、一緒にいた少年にとってはとんでもない自殺行為だ。
まさかこの高さから飛び降りるとは欠片も思っていなかったので、悲鳴交じりに王を呼んだ少年の声は、驚きと恐怖で裏返ってしまった。
だが、いつまで経っても恐れていた浮遊感が襲ってこない。
「……?」
王にしがみついたまま、少年がおそるおそる目を開けると、そこに見えたのは思っていたような景色ではなかった。
きっとものすごい勢いで地面が近づいているのだろうと思っていた少年だったが、実際に視界に広がったのは、驚くほど緩やかに穏やかに眼下の街が近づいていく様子だった。
浮遊、とは少し違う。緩やかに落下しているのだと気づいた少年は、思わず問うようにそっと王の口元あたりを見上げた。ここで目を合わせないように注意するあたり、こういった突飛な事態にも少しは慣れてきたのだろうか。
そんな少年の視線に気づいた王が、ああ、と口を開く。
「風霊がな、落下速度を緩めてくれているのだ。気圧の変化にも対応してくれているから、体調に異常をきたすこともないだろう」
「……魔法……」
そういえばこの人は王様で、王様は皆優れた魔法使いなのだった。いや、それにしても、
「魔法って、何も言わなくても発動できるものなんですね……」
きっとそれだけこの人が強いということなのだろうけれど、と思いつつそう言った少年だったが、王は少しだけ不思議そうな顔をして首を傾げた。
「いや? どんなに優れた魔法師でも、精霊の名を呼ばずに魔法を使うことなどできんよ。グレイがなんと教えたかは知らんが、定義立てるのならば、魔法はきっと簡易的かつ限定的な即時契約に似ている。私たち人間は、魔法が発動してから終わるまでの間、魔力を対価に期間限定で精霊の力を借りているのだ。これは一種の契約のようなものと言えるだろう。ならば、双方の同意がなければ成立しない。魔法師が意思伝達の手段として最も使っているものを通して、明確に精霊の名を呼ぶことで契約を持ちかけ、それに精霊が応える、といった一連の流れを経なければ、人間は魔法が使えないのだ」
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