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城下町デート4
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「あ、もしかして、王様は皆さんそうなんですか?」
「いいや。先ほど言った通り、魔法を使う際には必ず精霊の名を呼ばねばならない。これは王だろうとなんだろうと変わらぬ事実だ」
「でも、貴方は精霊の名前を呼ばなくても使えてしまうんですか?」
「そうなのだ。困ったな」
全く困っていない様子で言った王に、少年はやはり間の抜けた返事しか返せなかった。
「そうだキョウヤ。これは一応、あまり周囲に言いふらしてはいない秘密でな。できれば内密にして貰えると有難い」
「……秘密なら、僕の前でそんなことをしなければ良かったのでは……」
まだ付き合いは短いけれど、それでも、ついうっかりと秘密を漏らすような真似をする王ではないと少年は判っていた。だから、あれはきっとわざとだ。少年が気づくと判っていて、わざと精霊を呼ばずに風霊魔法を発動させたのだ。
「広く知られては色々と面倒なので話していないだけだからな。その程度の秘密ならば、お前に隠すのも変だろう」
「変、でしょうか……?」
少年は他国の庶民である。それだけで、国王の秘密を隠す理由には十分すぎるほどだと思うが。
「そうだとも。誰よりも愛しいお前に、無意味な隠し事などすべきではないだろう?」
「……はあ、そうですか」
そんな理由で簡単に秘密を明かしちゃうのはどうなのかなぁ、と思った少年だったが、きっと言っても無駄なので言いはしない。そして、王の相変わらずの愛情表現にも、特にこれといった反応を返そうとは思えなかった。
しかし、いくら穏やかな落下であるとは言え、未だ上空にいる状況で会話をこなす余裕があるというのは、普段の少年ではあり得ない話だ。恐らくはまだ少年も自覚していないのだろうが、これは、少年が王を深く信頼し始めているということを示していた。
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