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城下町デート6
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そんな彼に何を思ったのか、王は不意に、自身が纏っていた外套で少年をすっぽりと覆い隠してしまった。
「キョウヤが可愛らしくて話しかけたい気持ちは良く判るが、この子は人見知りでな。できればそっとしておいてはくれんか? それに、そうあれもこれもと商品を渡されては持ち切れんだろう。こうして贈り物をしてくれようという気持ちは嬉しく思うが、私への贈り物など税金だけで十分だ」
そんな王の言葉に、国民たちがどっと笑う。
「いやですわ陛下。税金は結局私たちのために使われるんですから、全然贈り物になっていないじゃありませんか」
「いやいや、国民の血税で豪遊させて貰っているとも。それに税金の全てが国民のために使われていると思ったら大間違いだぞ? 税で私腹を肥やすというのは貴族の常套手段だからな」
至極真面目な声で王がそう返せば、またもや皆が笑う。
「それでは陛下への贈り物は税金ということにするとして、恋人様への贈り物ならいかがですか?」
またもや上がった声に、王は軽く難しい顔をしてみせた。
「キョウヤへの贈り物は私がするから良いのだ。私の楽しみを奪わないで貰おうか」
「はははっ、陛下は意外と嫉妬深くていらっしゃる!」
「でもそういうことなら仕方ないわねぇ」
「そうだなぁ。それじゃあそろそろ諦めて仕事に戻るとするか。あんまり騒いでると、怒りのロンター宰相様に陛下が見つかっちまう」
やいのやいのと楽しそうに騒いでいた国民たちだったが、意外なことにそれ以上は王や少年に構うことなく、あっさりと解散していった。
国民が随分と親し気に王と会話をすることにも驚いた少年だったが、こうして簡単に引き下がったことにも驚いてしまう。
少年は知らないことだが、赤の国における当代の王と国民は、他国と比べると異常なまでに距離が近く、だからこそ王の来訪をそこまで特別視していないのだ。
国王陛下は、本当に必要なときに求めたならば、必ず直接会って話を聞いてくれる。だから、国王陛下と言葉を交わすことは、特別なことでもなんでもない、国民に等しく与えられた権利なのだ。
その信頼があるからこそ、国民は皆、王を引き留めようとはしない。グランデル王国における当代の国王とは、玉座に座る統治者ではなく、国民たちの手を直接取って導いてくれる先導者のようなものなのだ。
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