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城下町デート10
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「あ、て、店主さん、あの、本当に申し訳ありません。僕、こんなつもりじゃなくて、」
「いやはや、陛下は本当に貴方様を想っていらっしゃるのですね。お二人の幸せそうなご様子を拝見することができ、私もその幸福をひと欠片分けて頂いたような心地です」
「え、……あ、……はあ……」
幸せそう、だっただろうか。いや、国王の方はそうだったのかもしれないが、少なくとも少年は寧ろ死にそうだった。
「その通りだとも。これほど誰かを愛しいと思ったことはないのだ。私は間違いなく、世界で最も幸せな男だ」
うんうんと頷く王に、大変申し訳ないけれどちょっと黙ってて欲しいなぁと少年は思った。
「ふふふ、恋人様も自身を恋人ではないとおっしゃいますが、照れ隠しのようなものなのでございましょう。確かに、国王陛下の恋人というのは重圧でしょうから。躊躇われるのも無理はないことです」
(あ、この台詞、前にどこかで聞いたことあるな……)
聞いたことがあるもなにも、ほぼ同じ台詞をレクシリアにも言われている。
「重圧など感じなくても良いのだがなぁ。私など至る所で馬鹿王だのポンコツ王だのと罵られているのだし、そう構えることもないだろうに」
「何を仰られますか。陛下は間違いなく、円卓の連合国始まって以来の最高の王陛下であらせられます。これ以上の重圧もありますまい」
「こらこら、これではますますキョウヤが構えてしまう。キョウヤ、何も心配をすることはないのだぞ? お前がいてくれれば、私はそれだけで良いのだから」
「は、はあ……」
こうなるともう、勘違いを正そうなどという気は欠片も起きなくなってしまう。というより、恐らく正そうと思って正せるものではないのだろう。
曖昧な微笑みを浮かべた少年の頬に、王がもう一度キスを落とす。この王がやたらとキスをしたがる性分なのはなんとなく判っていたが、せめて人前ではやめて欲しいと少年は思った。思ったが、言っても多分無駄なので言いはしない。色々と諦めているのだ。
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