アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
城下町デート15
-
曖昧な記憶はやはり曖昧なままだったが、王の台詞から察するに、多分当時の自分は適当に肯定の意でも示してしまったのだろう。正直に言えば、贈り物といえばテディベアだという意見も、大きいほど良いという話も、全く理解も同意もできなかったのだが、少なくともこの王は、それが最良だとして自分にあのテディベアを贈ってくれたのだ。それを思うと、どうにも否定の言葉は紡ぎにくかった。
「……もしかして、やはりこれでは気に喰わないか……?」
少年が困惑した表情のままだったからか、王の表情がみるみる内に不安そうなものへと変わっていく。
「い、いえ、そんな。あの、ええと、……とても、素敵な贈り物を、ありがとうございます」
「本当に大丈夫か? 迷惑ならば、遠慮なく突き返してくれて構わんのだぞ?」
「迷惑だなんて、そんな。あの……、大きなテディベア、は、とても素敵で、嬉しい、です」
慌ててそう言って微笑めば、王の表情が、ぱあっと明るくなる。
「そうか! 嬉しいか! それは良かった」
余程嬉しかったのか、王はテディベアを持っていない方の腕を少年の腰に回すと、そのまま器用に彼を抱き上げてしまった。驚いた少年が咄嗟に王の首にしがみつけば、王の笑みがより一層深くなる。
「ああ、お前は本当に愛らしいなぁ」
「え、ええ、あの、お、降ろして、ください、」
怖いやら畏れ多いやらで身体を強張らせた少年に、王が首を傾げる。
「私に抱かれるのは嫌か?」
「い、いえ、あの、嫌、ではないんです、けど……」
嫌ではないが、落ち着かないのだ。そう思った少年だったが、悲しいことに王にその気持ちは伝わらなかったらしく、王はにこにこと機嫌の良さそうな微笑みを浮かべ、少年を降ろすことなく歩き出してしまった。
そして案の定、王があまりにも楽しそうな表情でいるものだから、これ以上降ろしてくれと言い出せなくなってしまった少年は、大人しく王に抱かれたまま街を行くことになってしまうのだった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
40 / 216