アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
城下町デート19
-
「そ、そんな、僕にそんな、高いのは、あの、」
ただでさえ、一点物のテディベアを貰ってしまった後なのだ。これ以上高価な物を貰ってしまうと、本当に罪悪感で身動きが取れなくなってしまいそうだった。
「気に入らんか?」
「いえ、気に入らないとか、そういう訳じゃなくて、あの……、」
「……そうか。お前が欲しくないのであれば、残念だがこの品は処分することにするか……」
「ええ!? しょ、処分しちゃうんですか……!?」
こんな高価そうなものを処分してしまうなんて、それは駄目だ。何よりも、この品はとても美しい一品である。こんな美しい品を捨ててしまうなんて、それは許容し難かった。
「お前に贈るために用意させた品だからな。お前がいらないと言うのであれば、処分するしかあるまいよ」
いやいや他にも用途があるだろう、と思った少年だったが、王がそう言うからにはきっと本気なのだ。お金持ちの考えることは理解できないが、このマフラーが処分されてしまうのはあまりにもあまりである。
何度か口をぱくぱくとさせた後、少年は諦めたように肩を落としてから、マフラーをそっと胸に引き寄せた。
「…………あの、ありがたく、頂きます……」
「おお、そうか! 貰ってくれるか! いや、しかし貰って嬉しくないものを無理矢理渡そうとは思わないのだ。何か気に入らない点があるのならば、より改善した品を用意させよう。どうだ?」
「いえ、僕には十分すぎるほど素敵なものだと思います。本当に、嬉しいですから」
このマフラーを処分された上で新しい品を用意されるなど、たまったものではない。そんなことをされてしまったら、少年は今度こそ罪の意識で吐いてしまいそうだ。
実際、このマフラーは素敵だと思うし、正直テディベアよりも嬉しい。それに、こうなったらもう貰うしかないのだろうと、少年は改めて覚悟を決めた。
「ありがとうございます。あの、大切に、します」
マフラーを握る手に少しだけ力を込めてそう言えば、王は本当に幸せそうに微笑んだ。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
44 / 216