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城下町デート20
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「ああ、お前に喜んで貰えて嬉しいよ」
そう言った王が、今度は店主の方を向く。そして王は、店主に向かって軽く頭を下げた。
「職人が丹精込めて作ったものに対し処分などという言葉を使ったこと、深く謝罪する。すまなかった」
「いえいえ、どうか頭をお上げください陛下。陛下が恋人様の不安を取り除こうと、敢えてそのような言葉選びをしようとしたことくらい、心得ております。それに陛下のことです。処分と言っても、大方ロンター宰相閣下にお譲りする、ということだったのではないですか?」
「これは参ったな。そこまで悟られていたか」
そう言って笑った王に、店主も穏やかな笑みを返す。
「え、あの、……それじゃあ、捨てちゃうわけじゃ、なかったんですか……?」
驚きを隠せない少年に微笑みかけたのは、店主だった。
「はい。ロステアール王陛下がそのようなことをされる筈がございません。陛下は誰よりも民を想い、その日々を民のために使ってくださっている素晴らしいお方なのです。その陛下が、民である我々の作ったものをないがしろにすることなど、有り得ません」
「は、はあ……」
やはり、この国王は少年が思っているよりもずっと国民たちに信頼されているようだ。少年が住んでいる金の国の王も、どちらかというと民からの信頼が厚い方だと思うが、それでもこの王のように手放しで賞賛されることはないし、幼い王を良くは思っていないのだろう話を聞く機会もある。だが、この王は違う。少なくとも、少年がこの国に来てから出会った人たちは、皆例外なく王を讃え、崇めているように見えた。例外がいるとしたら、グレイくらいではないだろうか。尤も、そのグレイもこの王を悪く思っているようではなかったが。
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