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豹変4
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「着きましたわ、キョウヤ様」
先導してくれる女官長の後ろを歩き、案内されたのは、昨日講義を受けた部屋よりは大きな部屋だった。
「それでは、私はこれで失礼致しますね。お勉強、頑張ってくださいませ」
「あ、ありがとうございます」
一礼した女官長に礼を返して見送ってから、そっと部屋に足を踏み入れる。
「おう、来たな」
おずおずと入室した少年に、既に部屋にいたグレイが歩み寄ってきた。
「あの、ここは……?」
部屋を見回した少年が困惑するのも無理はない。この部屋には調度品らしきものが一切なく、かろうじてあるものと言えば外から持ち込んだらしい移動式の黒板だけで、絨毯すら引いていない。
「ああ、実技をする上で、中のものが邪魔だったからな。全部他の部屋に移動させた。これならまあ、何かあっても壊れるもんは黒板くらいで済むだろう。ああ、壁や扉の心配もしなくて良いぞ。一応、部屋全体に強化魔法をかけておいて貰ったからな」
「えっと……魔術って、そんなに危ないものなんですか……?」
「いや、普通は危なくねェと思うが、暴発しないとも限らないからな。それで家具をぶっ壊したら面倒だろ」
グレイの言う通りだ。何しろ少年はごくごく一般的な庶民なので、万が一王宮の調度品を壊したりしたら、あまりのことに失神してしまいそうである。
「さて、そんじゃあやってみるか。お前、右利きだよな。じゃあこれを左手に握れ」
そう言って渡されたのは、内部で火が揺らめくような不思議な赤色をした石だった。
「これ、魔術鉱石、ですか?」
「ああ、それは火のフォルオト石。良いか、それを握ったまま、その石の力が左腕を伝って身体に行き、そのまま右腕、最後に右手の人差し指に流れていくのを想像しろ。そうすると、こんな感じで右の人差し指から光の軌道を生み出すことができる」
言いながら、グレイは別の赤い石を左手で握って、右の人差し指で宙で適当な模様を描いてみせた。
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