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豹変5
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「この光の軌道で魔術式を描くんだが、まあまずはこの光を出せなきゃ先に進めねェ。取りあえずそれを練習してみろ。ああ、昨日も言ったが、使いこなせって言ってる訳じゃねぇからな。一回でも自分で使っときゃ、どんなに頭が回らない状況でも相手がやろうとしてることが魔術なのか魔法なのかの判断くらいはつくだろうし、運が良けりゃあ突破口のひとつくらい思い浮かぶかもしんねェって話だ」
「……はい。やってみます」
頷いて、少年は石を握りしめて目を閉じた。
(石の力が、僕の右手まで流れて来る感じを、想像する……)
「……集中できてるな、良いぞ。じゃあ、そのまま流れて来る力を人差し指の先に集中させろ。オレが合図したタイミングで、黒板に描いてある魔術式を描くんだ。刺青師なら、作図は得意だろ」
(指先に、集中……)
「よし! 今だ!」
グレイの合図を受け、少年が目を開けて黒板を見る。そのまま流れるような動作で指先を宙に走らせた少年だったが、しかし、
「…………えっと……」
確かに描き始めは光の軌道が宙に描かれていたのだが、割と序盤でそれが消えてしまい、中途半端に描かれた式は何の現象も起こすことなく霧散してしまった。
「……何がいけなかったんでしょうか……」
「集中力不足、ってとこか。式を描く方に夢中になりすぎて、石の力を引き出す方に回す意識が足りなかったんだろうな。まあ、最初は誰でもこんなもんだ」
「なるほど……」
昨日の講義でグレイが魔術は学べば誰でもできるようになると言っていたから、ということはそこまで難しいものではないのだろうかと思っていたのだが、とんでもない。考えてみれば、魔術は勉強しなければ使えないのだし、才能さえあればなんとなく使えてしまう魔法よりもずっと難しいのではないだろうか。やはり、そんなものを自分が使えるとは思えない。
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