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天ヶ谷鏡哉5
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「なに呑気なこと言ってるんですか! これのどこが喧嘩に見えます!? テメェもテメェでこの人のことろくに知りもしねェで手ェ出してんじゃねェよ! 死にてェのか!」
レクシリアに向かって怒鳴ったあと『彼』に向かっても怒りを吐き散らしたグレイを見て、レクシリアも何か察するところがあったのだろう。すぐさま『彼』に視線を移してから口を開いた。
「風霊、キョウヤを捕らえろ」
レクシリアの言葉に『彼』がはっとしたときにはもう遅い。『彼』が回避行動を取ろうとしたときには既に、命を受けて吹いた風が『彼』の身体にしゅるりと巻き付いてその四肢を拘束していた。
「なにぶんたった今来たところなので事情が判りませんが、これで良いのですよね?」
「ええ、助かりました。どうにもこうにも、めちゃくちゃに暴れられて会話もできない状態だったので」
礼を述べたグレイだったが、なんだか面白くなさそうな顔をしている。その理由は単純で、自分が苦戦していた件をレクシリアが魔法で簡単に片づけてしまったことが気に食わないのだ。レクシリアはそれを察しつつも、いつものことなので取りあえず放っておくことにする。それよりも、今はあの少年に一体何があったのかを知る方が先だ。
「さて、何があったのか、話して頂けますね?」
それはグレイに向かって言った言葉だったが、グレイが何かを言う前に拘束されている『彼』が口を開いた。
「か弱い少年に二人がかりとは、少々卑怯が過ぎやぁしませんかね? 武術に秀でたグランデル王国が聞いて呆れる。ああいえ、レクシリア・グラ・ロンター宰相閣下におかれましては武術とは縁遠い生活を送られていらっしゃるでしょうから、そもそもが秀でてなどいないのかもしれませんけれど」
馬鹿にした様子を隠そうともせずに言ってくる『彼』にグレイは眉根を寄せて口を開きかけたが、レクシリアがそれを手で制した。
「今は私のことよりも貴方のことです。私が知っているキョウヤ様とは随分と様子が違うようにお見受け致しますが、一体どういうことでしょうか」
「これはこれは、オレの質問には答えないくせにそちらの質問には答えろと仰る。いやはや、権力者というものは良いですねェ」
『彼』の言葉に、レクシリアがグレイを見る。
「何の話ですか?」
「さあ、オレにも詳しいことは判りませんが、オレがちようの名前を出した途端に豹変したんですよ。それで、なんでお前がちようを知っているんだって襲ってきて」
「その問いには答えて差し上げなかったのですか?」
「相手が何を考えているのか判らないってのに、そうやすやすと答えられるわけないでしょう」
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