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天ヶ谷鏡哉9
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それを聞いて、グレイははっとしてレクシリアを見た。そうだ。レクシリアはグレイとは比べ物にならないくらいに王を大切に思っているのだから、この事態に何も思わない訳がない。
何も言わないレクシリアに、王がやれやれと笑う。
「お前たちが何を思っているのか、大体の想像はつく。だが、心配するようなことは何もないのだ。キョウヤはキョウヤなのだから」
言われ、レクシリアが目を向けた先にあった王の顔は、常と変わらないものだった。
王が浮かべる表情自体には何の意味もないことをレクシリアは知っている。この王にとっての表情というのは、その状況において最も相応しい仮面を被る行為でしかないのだ。だがそれでも、王は心配することはないと言った。それならば、レクシリアが気に病むようなことはないのだろう。王は本質的な意味のない気休めのような言葉は吐かない人物だから、きっとそうなのだ。
ふっと表情が和らいだレクシリアに、グレイもようやく安堵したような表情を浮かべる。
そんな二人の気持ちが落ち着いたのを確認してから、王は改めて『アレクサンドラ』に向き直った。
「どうやら色々と込み入った話をする必要がありそうだ。話して貰えるな?」
「……そうだな。こうなった以上、貴方たちも尋ねたいことは多々あるだろうし、ある程度まではお答えする」
溜息と共に吐き出された言葉に、王は満足そうに微笑んで返した。
「それでは、まずはゆっくりと座って話ができる場所に移動しようか」
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