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天ヶ谷鏡哉15
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「すまんな、レクシィ。さて、それでは話を続けようか。ちようとやらが全てを投げ出したせいでその役目がキョウヤに回ってきたということは理解したが、何故キョウヤだったのだ? 話を聞く限り、お前や『グレイ』のような人格の方が適任だろうと感じたのだが」
「そんなもの、簡単な話だ。鏡哉が一番ちようから愛されていた。だからちようは、鏡哉に助けて貰おうと全てを明け渡した。それだけさ」
「ほう?」
「天ヶ谷鏡哉という人格は、天ヶ谷ちようを愛するためだけに生み出されたものだ。母親からすら愛されなかった子供が、母からの愛情に類するものを欲し、それを与えてくれる唯一無二として、鏡哉を生み出した。だからこそ、鏡哉は私たちのような複雑な役目は負っていない。ただ、ちようを愛し、ちようの傍にいてやること。それだけが、鏡哉の全てだ」
どことなく強い口調で言われたそれは、牽制だ。そしてそれを受けた王は、柔らかく微笑んでみせた。
「言いたいことがあるのならば、はっきり言うべきだな。私は逃げも隠れもせん」
「……それでは、はっきりさせておこう。鏡哉にとっては、ちようこそが全てだ。貴方ではない。鏡哉が愛しているのはちようだけで、貴方ではないんだ。いや、そもそもそれ以前の問題だな。貴方が恋をしていると言い張っている鏡哉という存在は、命も魂もない、ただの作り物なのだから」
その言葉は、『アレクサンドラ』にとっては必殺のナイフのようなものだった。事実、レクシリアとグレイは『アレクサンドラ』の発言が持つ呪いを理解し、それが王の抱いた愛情を飲み込んでしまうのではないかと危惧さえした。だが、
「さて、それを決めるのはお前ではないし、私でもないな。故にこの件に関してコメントをするのは差し控えておこう」
まるでなんでもないことのようにそう言ってのけた王に、さすがの『アレクサンドラ』も一瞬だが呆けたような表情を浮かべてしまった。
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