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天ヶ谷鏡哉16
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「……失礼だが、私の話は理解したのか?」
「したとも。筋は通っているし、お前の様子を見る限り疑う必要はないだろう。さすがの私もまさかキョウヤが主人格ではないとまでは思っていなかったが、それ以外に関してはまあ予想の範囲内でもあった。だが、考えてもみろ。別々だった魂が統合されたか、これから分離するのかは知らんが、十中八九お前たちの魂が分かれる瞬間は存在するのだ。ならば、いちいち人格がどうこうなどと気にする必要もないだろう。元より人格に恋をしていけないという道理もない訳だしな」
「……貴方が何を言っているのか理解できない。人格に恋をしてはいけないという決まりはないかもしれないが、それは自己満足と虚しさしか残らない行為だ。そしてそもそも、ちようを愛するためだけに生み出された鏡哉が貴方を愛することは有り得ない。それこそ、人格がどうこう以前の問題だ。貴方の言う恋は、始まる前から成就しないことが決定している」
今度こそはっきりと言い切った『アレクサンドラ』に、しかし王は不思議そうな表情を浮かべた。
「お前のその自信がどこから来るのか全く判らんのだが、どうしてそう言い切れる? 仮にキョウヤがちようとやらを愛するために作られたとして、寸分狂わずその通りになる保証などないだろうに。元より生き物というのは、思い通りにはいかないものだ。だからこそ、創造主であるちようの意向に反してキョウヤが私を愛してしまうことは、ごく普通に有り得ることだろう」
「貴方こそ、その自信はどこから来るのだろうな。何度も言っている通り、鏡哉は生き物ではなくただの人格だ。作り主の意向に沿う行動をしない筈がない」
「なるほど、言われてみれば確かに、私のこの自信は一体何なのだろうなぁ」
首を傾げてみせた王に、思わずグレイが、こいつ馬鹿なのかと呟きを漏らしたが、普段は咎めるはずのレクシリアも同じことを思ったらしく、彼は少しだけ虚空を見つめるような疲れた表情を浮かべていた。
始めこそ王を案じていた二人だったが、ここまで来るとその心配が馬鹿馬鹿しいものだったということが嫌でも判ってしまう。王は至って普段と変わらない様子で、相変わらず己の発言に自信を持っている。つまるところ、たかだかこの程度のことで動じるような恋はしていないということなのだろう。多分。
愛情深いと言ってしまえばそれまでだが、これはどちらかというとやっぱりただの大馬鹿なだけなのではないか、とグレイは思った。
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