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ロステアール・クレウ・グランダ4
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いよいよ断頭台に上げられるときが来たかと、少年が身を固くする。王が発する言葉をここまで恐れるということは、自分はこの王に何かを期待していたのだろうか。ああ、きっとそうだ。醜く浅ましいからこそ、愛されることが怖いのに愛されたいと願ってしまうのだ。尤も、その願いは今度こそ断たれるのだけれど。
重い刃が己の首を落とすのを覚悟して、少年はきつく目を閉じた。しかし、
「まず、私はお前のことを愛しているのだから、お前が汚くても醜くても気にしない。良いな?」
思っていたのと違う言葉に、少年は思わず顔を上げてしまった。そして、やや呆けた顔で王を見る。
見上げた王の顔は、いつもと変わらない柔らかな笑みを象っていた。
「……あの…………、でも、お母さんは、僕のことを汚いって……、」
「お前の母はそうだったのだろうが、私はそうではない。私はお前の母ではないからな」
そう言った王に、やはり状況が飲み込めない少年は、思ったままに言葉を零す。
「……貴方は、汚いものが好き……?」
小さな呟きに、王が苦笑を漏らした。
「それは盛大な勘違いだが、お前がそれで納得できるのならばそういうことにしておいても構わんぞ」
そう言って、大きな掌が少年の髪を滑る。
王の言動から察するに、汚いものが好きという訳ではないのだろう。しかし、それならば何故、未だに少年に優しくしてくれるのだろうか。
「…………僕、お母さんにも嫌われてしまうくらい、とても汚いのに……」
自分がどれほど汚く醜いかを知られてしまった以上、この王が自分をそれでも愛してくれるなどいうことは有り得ない。そんな思いが籠められた言葉に、王が少しだけ悲しそうな顔をしてみせた。
「そんなに寂しいことを言うものではないぞ、キョウヤ」
「……でも、僕は……、」
汚い自分が生きているせいで、美しかった母の顔は醜く歪んでしまったから。こんなにも綺麗なこの人まで母と同じようになってしまうのは嫌なのだ。怖いのだ。
だって、王はもう少年がどれほど汚れた存在であるかを知ってしまった。知ってしまった以上、その汚れはいつか王を蝕んでしまうかもしれない。美しかった少年の母が、醜悪な何かに成り果ててしまったように。
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