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ロステアール・クレウ・グランダ5
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目を伏せて唇を強く噛んだ少年を、王が静かに見下ろす。
「……お前は、私の美しさがそんなにも簡単に損なわれてしまうものだと思っているのか? お前を愛し、お前に触れるだけで、私という人間は汚れてしまうと、そう思っているのか?」
その言葉に、少年は弾かれたように目を開けて王を見た。その瞳が、不安と恐怖で頼りなく揺れる。
「そ、そんなことはないです。ごめんなさい。僕、そんなつもりは……、」
王に対してこの上ない侮辱を吐いてしまったのかもしれないと青褪めた少年に、王が少しだけ困ったような表情を浮かべた。
「責めているのではない。ただ、尋ねているだけだ。もしお前が本当にそう思っているのならば、私の驕りが過ぎたのだろう。お前の言葉を事実として深く受け止め、考えを改める」
「ち、違うんです、そんなこと、だって、貴方は、とても綺麗だから……」
そんな簡単にその美しさが損なわれてしまうなんて、思うはずがない。この人の美しさは、そんな儚くか弱いものではないのだから。
「ふむ。それでは、お前が気にすることはもう何もないではないか」
「……え、ええと……?」
王の手が、少年の手をそっと包み込んだ。そうされて初めて気づいたが、どうやら自分の指はもうずっと前から震えていたらしい。
「たとえお前がどんなに醜く汚れた存在だとしても、私の美しさが損なわれることはない。ならば、私がお前を愛し、お前を望んだところで、そこに問題などありはしないだろう?」
「…………どうして……、」
どうして、この人はこんなにも自信で満ち溢れた言葉を紡ぐのだろうか。王の美しさが至上のものである知っていてなお、少年は自分がそれを汚してしまう可能性を思ってしまうのに。どうして王は、僅かな可能性すら存在しないと言い切れるのだろうか。
「お前が私の在り方を美しいと言ったのだ。それならば、私が私である限り、それが揺らぐことなどありはせんよ」
王の言っていることはやはり半分以上理解できなかったが、それでも、きっと、彼の言葉は少年が求めていたものに近かったのだろう。
「……ほんとう……?」
細い声が、少年の喉から零れ落ちた。
「……本当に? 本当に、貴方は、ずっと綺麗なままでいてくれる……?」
自分の手を包む王の指を、少年が僅かに握り返す。それはやはり、あのときと同じなけなしの勇気で、しかしあのときとは違って、もっとずっと本質的な一歩であった。それならば、王がその歩みを祝福しない訳がないのだ。
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