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ロステアール・クレウ・グランダ10
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この煌炎の瞳に嘘はない。だって、こんなにも真っ直ぐで、こんなにも美しいのだ。だから、少年は正しく、王にとっての唯一なのだろう。それがどうして少年だったのかは判らない。もしかすると少年でなければ駄目な理由があったのかもしれないし、元より理由など存在しなかったのかもしれない。それでも、王にとって少年は代わりの利かない唯一無二なのだということだけは、覆りようのない事実としてそこに在った。
「……僕……、」
こんなとき、どんな言葉を返すのが正解なのだろうか。嬉しいような、悲しいような、不思議な心地だ。
結局次に続けるべき言葉を見つけられないまま黙ってしまった少年に、王は少し首を傾げた後、悪戯っぽく笑って唇に人差し指を当てた。
「私の感情に関しては、レクシィしか知る者のいない最重要機密でな。他言無用だぞ?」
軽い調子で言われた割には重すぎる言葉に、少年は僅かに青褪めた。
「そ、そんな大事なこと、僕に話して良かったんですか……?」
「何を言う。お前だからこそ話したのだ。愛しているお前を偽ることなどできるはずがない。お前に対しては心の底から抱いた感情のままに接しているが、それ以外の場での私の表情は作り物だからな。作り物である以上、お前には正直にそう話しておくべきだろう?」
そんな理由で最重要機密を知らされてしまうのは困ってしまうが、きっとこれは王なりの誠意の示し方なのだろう。ならば少年がここで言うべきは、ひとつである。
「……そんな大切なことを僕に話してくれて、ありがとう、ございます」
「いいや、こちらこそ聞いてくれてありがとう。何よりも大切なお前に私のことを知って貰えること、心から嬉しいと思う」
そう言った王が、少年の頬に手を伸ばし、その肌にそっと掌を滑らせる。相変わらず接触が苦手な少年ではあったが、その掌を拒絶しようとは思わなかった。
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