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ロステアール・クレウ・グランダ15
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「ああ、いや、つまらない話を聞かせてしまったな。どうか許して欲しい」
そう言った王の掌が、少年の髪をゆるりと滑る。
「このような退屈な話を訊いてくれたこと、心から感謝する。……特に王家殺しの件については、誰にも言ったことがなくてな。レクシィなどは何か思うところがあるようだが、あれにすら話したことはない。だからだろうか。ほんの少しだけ、胸のつかえが取れたような気がするな。といっても、これもそうあれと用意された感情なのだが」
そう言ってやはり笑った王が、少年の頭を撫でる。
「だが、お前に知って貰えて嬉しいというのは、本当の感情だ。……お前には私のすべてを知っていて欲しいと思うのは、きっとお前を愛しているからなのだろうな」
そう囁く声が、先程の無機質なものとは似ても似つかないほどに暖かな響きをしているから。だから少年はまた、嬉しいような悲しいような、不思議な気持ちになってしまうのだ。
「重苦しい話ばかり聞かされて、精神が疲弊しただろう。私も少々話し疲れたし、お前も随分と眠そうだ。今日はもう、眠ると良い。なに、湯浴みならば明日の朝にでもできるさ。ゆっくり休んで、明日はもっと楽しい話をしよう」
「…………あなた、は……」
小さな声に、王が少年を見つめる。王の言う通り、少年は疲れたのか眠そうな顔をしていた。
「……あなたは、さみしく……なかったの……?」
薄く開いた唇から零れた問いは、まるで無意味なものだった。王には感情がないのだから、こんな質問に意味がある筈がない。それでも、少年は訊かずにはいられなかった。
「寂しいと思ったことはないな。寂しいという感情を知らないから」
あたたかな掌が眠りを誘うように頭を撫でる。段々と眠気に身を委ね始めた少年の耳に届いた言葉は、予想通りのものだった。
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