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師匠
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「名前まで知られてるって⋯俺のこと、前々から目ぇつけてたのかよ?」
噂通りの堅物生徒会長なら十分考えられる。
つーか、学年も接点もねぇのにフルネームにクラスまで把握してるとか気持ち悪ぃレベルだ。
いや、コイツなら、全校生徒の名前と顔を丸暗記していて当然なのか。
こっちは睨んでんのに手を貸そうかと屈んできやがったから、慌てて立ち上がった。
なんか格闘技を齧ってそうだよな。
安易に近寄らねぇようにしねぇと。
「察しが良くて助かる」
こっちは警戒して冷や汗まで出てんのに、なぜか安堵した様子の生徒会長。
俺がもっと暴れるとでも思ってたのか?
ここは、ヤリスポットとして一部じゃ有名だ。
生徒会長自ら網を張ってたとこに、目をつけてた俺がノコノコやって来たってところか。
はぁ⋯このまま生徒指導室に引っ張られ、証拠とセットで突き出されんの?
扉とさっきまでヤッてたマットの配置からして、情事そのものは押さえられてねぇ筈だ。
けど、この教師受けの良い生徒会長が「現行犯」と言えば前科もあるし信じねぇ教師を探す方が難しい。
よりによって、なんで初日のまだ一発もキメてないときに⋯
ガリガリ頭を掻いていたら、生徒会長はしたり顔で語ってくる。
「進路が未確定の同級生には頼みにくいとなると、成瀬君以外に師匠候補は3人ほど居たんだ」
「⋯は?
なんの話してんだよ?」
ツラツラ語りだした内容に、疑問しか沸かねぇ。
師匠とか言ってなかったか、コイツ?
「何って⋯」
生徒会長の続く言葉は、本鈴の音に掻き消された。
「あっ!」と驚き、生徒会長は倉庫から出ていこうと背を向ける。
おっ、見逃してくれんのかよ?
「今は時間が無いので、放課後生徒会室に来てください」
一瞬俺の存在を忘れていた顔が振り返り、ピシリと予約をねじ込まれた。
だよなぁ、だーよーなー
名前に顔、あと、恐らく下半身露出してる俺の写真まで持ってんのに見逃すわきゃねぇよな。
そのとき、ヤツの眼鏡がキラッと光って見えたのは、心の補正効果にしちゃ出来すぎた演出だった。
⋯⋯よし、バックレるか。
教室に戻って悶々と考えてもなんにも思いつかねぇ。
あっという間に時間が過ぎて、気が付いたら放課後。
ツレに他校の女子とカラオケに行こうぜと誘われ、問題先送りでそれについて行こうとしたんだが。
『2年1組、成瀬 隼人君。
生徒会室まで来てください』
廊下に響いた放送に、周りの空気がガラリと色を変える。
心配されるなら良い方で、疑いの目まで向けられる。
その場を適当に誤魔化して、ダッシュ。
ノック無しに生徒会室の扉を開けると、「ようこそ」と生徒会長が自席から立ち上がって出迎えに来た。
いや、ようこそじゃねぇよっ
なに放送かましてんだよっ
生徒会に俺が目ぇつけられたのバレバレで、明日から女子に避けられんの決定じゃねぇかっ
自分の置かれた立場も忘れ、校内放送の呼び出しに文句を言ってやろうと息巻いたが。
「では、始めようか」
生徒会長から真剣な顔でプリントを渡され、思わず受け取ってしまった。
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