アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
2
-
ランチタイムのウチはケーキ屋というよりはカフェに近い雰囲気で
この時間帯は結構混むしサンドイッチとかサラダも置いてあるから仕事の合間に寄るようなリーマンも結構いる。
その中で一人、大学生…なのかな。
白いシャツにサマージャケットを羽織った黒髪美人が目に入った。
そいつは左手でスマホを操作しながら
右手はテーブルの上に置いてあるタブレット端末を弄っている。
相当器用な奴だ。
お陰で食べ物を置くスペースは無いし、
テーブルの片隅にちょこんと置いてあるアイスコーヒーは、
氷が溶けて汗だくになっているのにまだ半分は残っている。
変な人。
一応ケーキ屋なんだけど、ここ。
ケーキ食わないどころか食い物すら頼まずに。
「失礼しまーす。
だいぶぬるいと思いますけどコーヒー新しいの持ってきますか?」
気になったら放っておけないのが俺で、
忙しなく指を動かしているその人の前に立った。
美人さんは慌てて二刀流していた端末を閉じると、
ふわりといい匂いを嗅ぐわせながらこちらを見上げる。
んあ、ばちくそ美人。
まさか女…?
「あぁいえ、それは申し訳ないので。」
と、一瞬よぎった考えは
低くて響きのある正真正銘男な声に、脆くも儚く崩れ去る。
軽く微笑むその顔を見て赤面したのは
…まぁ美人すぎるから仕方ない。
んな申し訳〜とか言う程じゃねえのに。
どうせそれ、回収したら冷やして俺が飲むだけだし。
「あーそっすか?じゃ汗だけ拭いときますね。」
律儀に頭を下げるあたり、
この美人さんは結構良い奴らしい。
俺なら1人で店来て店員に絡まれたら即帰る。
テーブルも軽く拭き取って、再びコーヒーをあった場所に戻せば
何故か俺を見続ける美人さんとバッチリ目が合った。
「…んすか?」
「いえ…何でも。」
不思議な間。
初対面で間違いないのに
なぜか、居心地が悪いとは思わなくて
「何も食わないんすか?」
今が接客中だなんて事はすっかり忘れて
気づけばぽろっと本音が飛び出していた。
「俺甘いもの、あまり得意じゃなくて…。
それに結構混んできましたし、今日はそろそろ出ますね。」
あ、別にそういう意味で言ったんじゃねえんだけどな。
言い方悪かった、かな。
美人さんはさっき俺が拭いてやったコーヒーのグラスを手に取ると、
それを唇の目の前まで持っていき───ぴたりと動きを止める。
「あまり見られると緊張するんですが?」
「…っ。」
少し意地悪そうな笑みを浮かべたと思えば、長いまつ毛が伏せられて
喉の小さな膨らみが色気を纏って数回、動いた。
一瞬だけ交わった視線が、めちゃくちゃ綺麗で忘れられない。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
2 / 17